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日経アーキテクチュアトップニュースとコラム > 記事(前のページ)

実績がない設計者もいい建築をつくる

コンペ・プロポに精通した新井久敏氏に聞く(その1)

2017/11/15

新井久敏氏は、公共事業の設計コンペ・プロポーザルに関する数少ないスペシャリストの1人だ。群馬県の職員時代は、県内の26に及ぶ設計コンペ・プロポをサポート。入札によらない設計者選定の大切さを訴え続けた。新井氏にまずは最近のコンペ・プロポの課題とその打開策を聞いた。

──公共事業における最近の設計コンペやプロポーザルで、新井さんが問題だと感じておられることはありますか。

 参加資格が厳し過ぎますよね。そういうコンペ・プロポが多いと思います。どうしてかというと、発注者側からすると、案の良しあしは別として、この人で本当に大丈夫なのか、自治体の内部ではなかなか判断がつかないので、安心感を優先し、肩書や実績で判断しがちになるからです。

 候補者を採点しているプロポーザルの中で、配点表がたまに公表されているものがありますが、明らかに一級建築士の数や、何千m2という規模の類似建物の設計経験を重視しており、それだけで本当に最終候補者を選んでいいのかという疑問があります。

新井久敏氏。あらい・ひさとし:1956年群馬県生まれ。79年に群馬県入庁。建築確認、営繕、自然環境保全、高崎市出向など建築行政に関わる傍ら、公務とは別に90年代後半から群馬県内の公共建築のプロポーザル・コンペの企画を支援。「上信越高原国立公園鹿沢園地自然学習歩道施設」で2007年日本建築学会賞(業績)、09年度土木学会デザイン賞優秀賞を受賞。16年高崎土木事務所次長を最後に、群馬県を勇退。17年これからの建築士賞入賞。企画を支援したプロポ・コンペは26件に及ぶ。現在、同県の嘱託職員(写真:日経アーキテクチュア)

──設計者のこれまでの経験や組織の規模は、建築の出来栄えにはあまり関係ない?

 過去のいろいろな建築家のデビュー作にしても、あるいはそれぞれの新たなジャンルへの挑戦にしても、だいたいが初めて取り組むものがいい評価です。細かい部分での失敗はもちろんあるのかもしれませんが、初めてチャレンジするとなると、より真剣に取り組むし、いろいろと調べますから。

 そういうことが、自治体の側は分かっていないのだと思います。では分かったところで、それをどういうふうに判断するのか、実はもう1つ問題点だと思っているのが審査員です。

 審査員が目利きでないといけない。目利きの審査員をいかに入れて、そういう実績だけではない、「この人なら本当にできるだろう」「この提案はいいだろう」というところをきちんと評価していくことが非常に重要だと思います。

 審査員を見ていても、「えっ」と思ったり、あるいは審査委員会を別に定めるとあって、要項に審査員の名前が全く出てこなかったりするのはいかがなものでしょうか。本気で選ぼうとしているのか、疑問が残ります。

──逆に、このプロポーザルは非常に良かったとか、これは褒めてあげたいなというコンペ・プロポはありますか。

 コンペ・プロポで話題になるものは正直言って、1年にそういくつもない状況です。例えば、大阪市の新美術館のコンペ、長野県の信濃美術館整備事業や熊本県甲佐町住まいの復興拠点施設整備の設計プロポーザルなど、注目されたものは問題がないと思います。ただ、甲佐町の審査員に、町長と副町長、町の建設課長が並んでいます。立場が上下関係にある審査員の構成はいかがなものかというのはありますが(笑)。

 そのくらいの例は良くて当たり前だと思います。こうした目立ったものではなく、自治体が日常的にやっているコンペ・プロポーザルは結構あり、知らない間に行われていたというのもあります。その辺の底上げをしないといけないですね。

森 清日経アーキテクチュア

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