4月に発生した熊本地震は、住宅業界に大きな衝撃を与えました。9月1日の防災の日に合わせて、熊本地震の実態から、これからの家づくりの在り方を考え直そうという人は多いことでしょう。日経ホームビルダーでは、熊本地震から次の世代の家づくりを学ぶべく、書籍「なぜ新耐震住宅は倒れたか」を発行しました。ここでは、記事の一部を再編集してご紹介します。第1回は、熊本地震が住宅業界に与えた被害の深刻さを改めて振り返ります。


 「築浅の現行基準の家が倒壊した」「新耐震基準の住宅もたくさん倒れている」――。2016年4月に発生した熊本地震は、家づくりに携わるプロに衝撃を与えた。震度7を2度も観測した熊本県益城町で、戸建て住宅に大きな被害が発生したからだ。特に、新耐震基準に沿って建てられた住宅の被害が深刻だ。

取材班が踏査した熊本県益城町のある街区の本震後の様子。外観から被災状況を調べた木造住宅の3分の1以上が崩壊したり大きく変形したりしていた。住民によると、この街区には1980年前後に建てた住宅が多く残っていた(写真:日経ホームビルダー)
取材班が踏査した熊本県益城町のある街区の本震後の様子。外観から被災状況を調べた木造住宅の3分の1以上が崩壊したり大きく変形したりしていた。住民によると、この街区には1980年前後に建てた住宅が多く残っていた(写真:日経ホームビルダー)
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 現行の耐震基準は、1981年に改正された建築基準法がベースとなっている。1981年より前を「旧耐震基準」、1981年以降を「新耐震基準」と呼ぶのが一般的だ。だが、日経ホームビルダーでは、新耐震基準をあえて二つに分け「新耐震基準」と「2000年基準」と呼ぶことにした。新耐震基準に対して2000年に、「基礎」「柱梁や筋かいの接合部」「壁のバランス」に関する告示が示されたのがその理由だ。つまり、1981年より前を「旧耐震基準」、1981年~2000年までを「新耐震基準」、2000年以降を「2000年基準」と区分しているのだ。

 従来の耐震補強は、旧耐震基準の住宅を中心に実施されてきた。新耐震基準の住宅は現行基準に適合しているので大丈夫と考えられてきたからだ。ところが熊本地震では、新耐震基準や2000年基準の住宅が倒壊した。