4月に発生した熊本地震は、住宅業界に大きな衝撃を与えました。9月1日の防災の日に合わせて、熊本地震の実態から、これからの家づくりの在り方を考え直そうという人は多いことでしょう。日経ホームビルダーでは、熊本地震から次の世代の家づくりを学ぶべく、書籍「なぜ新耐震住宅は倒れたか」を発行しました。ここでは3回に分けて、記事の一部を紹介します。第2回は、熊本地震の被災地で見えてきた2000年基準の住宅が倒壊した要因に迫ります。


 熊本地震では、現行の耐震基準、いわゆる2000年基準の住宅が倒壊した。住宅Aはその一つだ。

 2010年に完成した熊本県益城町の住宅Aは、長期優良住宅の認定を取得するため、壁量を建築基準法の1.25倍とする住宅性能表示制度の耐震等級2(等級2)で設計していた。国が定める耐震基準よりも高い耐震性能であったはずだが、本震で倒壊した。

倒壊した住宅Aを北東側から見る。1階が南西側につぶれている。地震動は東西方向が強かった。1階の柱は2階梁との接合部で折れている(写真:宮澤健二)
倒壊した住宅Aを北東側から見る。1階が南西側につぶれている。地震動は東西方向が強かった。1階の柱は2階梁との接合部で折れている(写真:宮澤健二)
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北側の外壁の筋かいは端部金物の近くで破断していた。筋かい端部金物のネジが抜けていた。柱と土台は図面に記載のなかった平板接合金物で固定され、土台を裂きながら柱が引き抜かれていた(写真:日経ホームビルダー)
北側の外壁の筋かいは端部金物の近くで破断していた。筋かい端部金物のネジが抜けていた。柱と土台は図面に記載のなかった平板接合金物で固定され、土台を裂きながら柱が引き抜かれていた(写真:日経ホームビルダー)
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住宅Aの北東側の出隅付近。出隅には平板の柱頭柱脚金物、そこから455mm離れた場所には25kNのホールダウン金物が取り付けられていたが、柱が土台から引き抜かれていた(写真:日経ホームビルダー)
住宅Aの北東側の出隅付近。出隅には平板の柱頭柱脚金物、そこから455mm離れた場所には25kNのホールダウン金物が取り付けられていたが、柱が土台から引き抜かれていた(写真:日経ホームビルダー)
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 日経ホームビルダーはこの住宅Aを例に取り、2000年基準に沿って建設された住宅が倒壊した原因を探った。居住者の了解を得て図面を入手し、木造住宅の専門家に分析を依頼。構造計算ソフトを開発するインテグラル(つくば市)でシステム開発部マネジャーを務める落合小太郎さんが構造計算を担当し、工学院大学名誉教授の宮澤健二さんとインテグラル社長の柳澤泰男さんが結果を分析した。

(資料:居住者から入手したものを基に日経ホームビルダーが作成)
(資料:居住者から入手したものを基に日経ホームビルダーが作成)
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