熊本地震以降、家づくりにおいて、工務店や設計事務所といった実務者はどのような対応をしなくてはならないのだろうか。建築基準法の改定や4号特例廃止の声も上がっている。日経ホームビルダーでは、実務者向けに実施したアンケートの結果と識者の意見を中心に、家づくりの方向性を探った。

 まず、建基法の耐震基準のレベルを引き上げるべきかどうか、尋ねた。実務者の意見では、「非常にそう思う」(25.2%)、「どちらかといえばそう思う」(32.5%)を合わせた肯定派が6割近くを占めた〔図1〕。住まい手の場合は、「分からない」(34.0%)という意見が多いものの、実務者と同様に肯定派の比率が52.2%と高い。

〔図1〕耐震基準レベルを上げるべきか
〔図1〕耐震基準レベルを上げるべきか
(資料:日経ホームビルダー)
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 実務者の肯定派からは「対応できない実務者は淘汰されるべきだ」という厳しい意見もある。だが、改定の前提として、想定を超える大地震にいかに対応するかを考慮した考えが多く、「繰り返しの地震を考慮する必要がある」などの声もあった〔図2〕。一方、否定派は、真っ向から反対というわけでもなさそうだ。「基準を上げても施工者の技術が追い付かないのでは意味がない」といった趣旨の声もある。

〔図2〕耐震レベル改定への意見
〔図2〕耐震レベル改定への意見
(資料:日経ホームビルダー)
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 学識者の意見も様々だ。日経ホームビルダーでは、木造建築の研究や熊本地震調査などに携わる4人の識者に尋ねた〔図3〕。新たな仕組みづくりなどの必要性を指摘する意見や、現在の建基法の運用などで生じる矛盾を見直す必要があることなどの指摘があった。

〔図3〕建築基準法見直しに対する学識者の意見
〔図3〕建築基準法見直しに対する学識者の意見
(資料:日経ホームビルダー)
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 これら、住まい手、実務者、識者それぞれの意見を読み解くと、単純に基準を上げて改定するといった話ではなく、より現場に即した建基法の見直しが求められている。

熊本地震が突き付けた戸建ての死角。問題がないはずの新耐震住宅が多数倒壊した。被災住宅の現地調査と図面分析から、倒壊の原因と対策を読み解く。

定価:本体2,400円+税。日経ホームビルダー(編)
A5判、約200ページ
ISBN:978-4-8222-0069-5
商品番号:255320
発行日:2016年8月29日
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熊本地震の被害から地震に強い家を再検証しました。一般的には、昭和56年(1981年)の新耐震基準より古い家が地震に弱いと考えられてきましたが、熊本地震では新耐震基準の家も2000年を境に耐震性能に違いがあることが明らかになりました。2000年の告示で追加になった規定や、くぎのめり込みによる強度の低下など、日経ホームビルダーが報じてきた耐震対策の課題を一冊にまとめました。[ 詳細・目次一覧