想定を超える豪雨が各地で牙をむく。家づくりや街づくりも変化が求められている。

 6月下旬から7月上旬にかけて、梅雨前線や台風3号の影響で、九州北部を中心に猛烈な雨が降った。気象庁によると、7月5日午前0時から6日午前0時までの降水量は、福岡県朝倉市朝倉で586.0mm、大分県日田市日田で402.5mm、長崎県壱岐市芦辺で372.5mmなど記録的な大雨だった。

九州北部で7月5日午前0時から7月6日午前0時の期間に観測した降雨量の分布図(資料:気象庁)
九州北部で7月5日午前0時から7月6日午前0時の期間に観測した降雨量の分布図(資料:気象庁)
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 この豪雨は大きな水害を招いた。特に、筑後川水系の河川があちらこちらで氾濫。土石流を引き起こし、土砂や流木が建物を襲った。

 8月1日時点の福岡県の発表では、家屋の被害は981棟。流木が家屋にぶつかるなどして、全壊や半壊に至った建物も少なくなかった。

 流木や土砂による被害のほかに、床上や床下浸水といった豪雨による水害も目立っている。九州北部豪雨から1カ月もたたない7月22日から23日にかけて、秋田県で降り続いた記録的な大雨は、横手市内などで大きな被害をもたらした。

 22日からの2日間の降水量は、秋田空港がある秋田市雄和で348.5mm、横手市横手で314.5mmと、300mmを超える豪雨となった。同地域で平年の7月の降雨量の1.5倍を超える記録的な大雨だった。この影響で河川が氾濫。多くの住宅に被害が生じた。8月1日時点で全壊2棟、半壊38棟、床上浸水650棟、床下浸水1202棟に上った。

 ここ数年を振り返ってもほぼ毎年のように記録的な豪雨が水害を招いている。2015年9月に発生した関東・東北豪雨では5日間の総雨量が関東地方で600mm、東北地方で500mmを超え、浸水家屋が1万2000棟以上に及んだ。16年8月には台風の豪雨が影響し、北海道では8月16日から31日までの降水量が858.0mmを記録。大きな被害をもたらした。

 経済的な損害は大きい。国土交通省が発表した16年の水害被害額(暫定値)によると、被害額は全国で約4620億円に上った。07年から16年の過去10年間で見ると、2番目に大きい額だった。主な要因は、16年の台風10号と、16年6月18日から7月5日に生じた梅雨前線に伴う豪雨だ。

 もはや水害は地震や火災の対策と同じように、家づくりの際には備えておくべき災害に変化してきている。