ハウステンボスが運営する「変なホテル」(長崎県佐世保市)がオープンして丸2年が過ぎた。同社変なホテル事業開発室総支配人の大江岳世志氏は2017年7月21日、「インバウンド・ジャパン2017」(主催:日経BP社)の基調講演で、「利用者が飽きることのないように、日々新しい取り組みに挑んでおり、高い稼働率を保っている。外国人旅行者の利用も増え続けている」と、これまでの運営に手応えを示した。

変なホテル事業開発室総支配人の大江岳世志氏(写真:清野 泰弘)
変なホテル事業開発室総支配人の大江岳世志氏(写真:清野 泰弘)
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 大江氏は、「変なホテルは、“変わり続けることを約束する”ことをコンセプトに掲げている。名前にある『変』は『変化』『進化』を意味するものだ。開発のテーマは大きく3つあった」と説明した。

 テーマとして挙げた1つ目は、建設コストを抑制し、世界展開できるホテルをつくること。通常、ホテルの建設は2~3年を要するが、変なホテルの工期は、1期棟が9カ月、2期棟は6カ月だったという。短工期化によって建設コストを抑えたのだ。

 2つ目は、人件費の削減につながるサービスロボットの導入だ。開業当初は、客室72室に対して30~35人のスタッフを配置していたが、現在は144室に拡張したにもかかわらず、スタッフを7人に減らしている。人件費を5分の1に削減した。「世界で最も生産性の高いホテルを目指している」(大江氏)。

 3つ目は、ホテル業界で初めて導入したという「顔認証」による客室ドアの解錠システムだ。 

 大江氏は、「私たちの取り組みは、常に日本初、世界初を掲げている。それを象徴するのが、ロボットの導入だ」と言う。 開業当初は、フロントやクローク、ポーター、そして客室に、計6種類82台のロボットを配置していたが、現在は26種類219台のロボットを稼働させている。

 それぞれが提供するサービスの内容も進化してきた。

 例えば、フロントロボットは、当初2台で、1台が日本語と英語のバイリンガル対応、もう1台が日本語のみの対応だった。その後、日・英・中・韓の4カ国語対応の3台体制になり、さらに「音声認識チェックインシステム」に発展した。現在は、パスポートの顔写真を認証して、サインすればチェックインが終わる「パスポートチェックインシステム」を導入。チェックインに掛かる時間は、わずか20~30秒で済むという。

 客室ロボットも同様に進化している。当初の音声認識機能に、その後、相づち機能が加わり、この7月からはエアコンとテレビの制御機能なども加わった。

 「利用者に楽しんでもらうエンターテインメント性と、業務の効率化という2つの側面から、今後もロボット化を進めていく。ロボット化以外にも、客室の輻射空調システム、太陽光発電システム、水素蓄電池といった取り組みも進めている」(大江氏)。

 現在、変なホテルは、ハウステンボスと「変なホテル舞浜 東京ベイ」(千葉県浦安市)の2つだが、2017年8月1日に3店目となる「変なホテル ラグーナテンボス」(愛知県蒲郡市)がオープンする予定だ。大江氏は、「今後5年以内に国内外で100店となるペースで、ホテルの開業を拡大させていく計画だ」と語った。

変なホテル事業開発室総支配人の大江岳世志氏が講演している様子(写真:清野 泰弘)
変なホテル事業開発室総支配人の大江岳世志氏が講演している様子(写真:清野 泰弘)
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