格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションの代表取締役CEO(最高経営責任者)である井上慎一氏は、訪日観光のセミナー・展示会「インバウンド・ジャパン2016」(7月20~22日、会場:東京ビッグサイト、主催:日経BP社、共催:ジャパンショッピングツーリズム協会)で講演し、アジアからの訪日観光客を多数取り込んできた自社の戦略について解説した。

講演するピーチ・アビエーションの井上慎一CEO。明日の日本を支える観光ビジョン構想会議にも、LCC経営者で唯一、有識者として参画している(写真:赤坂 麻実)
講演するピーチ・アビエーションの井上慎一CEO。明日の日本を支える観光ビジョン構想会議にも、LCC経営者で唯一、有識者として参画している(写真:赤坂 麻実)
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 同社は全日本空輸(ANA)の社内ベンチャーとして発足しており、井上CEOは当時ANA社長だった故山元峯生氏から「アジアの需要を取り込め」と命じられていたという。「まさにインバウンドのために生まれた会社」(井上CEO)だ。社名も、アジアの顧客を意識し、中国で桃が不老不死や長寿をもたらす特別な存在とされていたことに着目して決定した。

 同社のコンセプトは「空飛ぶ電車」。電車のように簡単に切符を買えて、待ち時間なく改札を通過でき、安全で遅延が少ない運行を目指した。同社の自動チェックイン機は5秒でチェックインが可能といい、「世界最短」をうたっている。機内の座席を指定席と自由席に分ける、機内食や飲み物などは有料で提供するといった運用も、鉄道サービスにならっている。

 ピーチのチェックイン機は本体が段ボール製であることも有名。従来の機械より大画面のディスプレーを採用し、後ろに並ぶ人にも準備を促すメッセージを表示するなどした分、外装材料を安価にして、全体のコストを従来並みに抑えた。結果として「メディアに取材され、無料で宣伝できた」という。