訪日観光客が日本に求めているのは「日本らしさ」――。九州旅客鉄道(JR九州)の代表取締役会長である唐池恒二氏が、こんな持論を展開した。同氏は訪日観光に関するセミナー・展示会「インバウンド・ジャパン 2016」(7月20~22日、会場:東京ビッグサイト、主催:日経BP社、共催:ジャパンショッピングツーリズム協会)で講演し、具体例を挙げながら、人(客)を集める術を紹介した。

講演するJR九州の唐池恒二会長。安倍晋三首相を議長とする政府の「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」にも有識者として参画している(写真:赤坂 麻実)
講演するJR九州の唐池恒二会長。安倍晋三首相を議長とする政府の「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」にも有識者として参画している(写真:赤坂 麻実)
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 唐池会長は「海外からの観光客は日本に“日本らしさ”を求めている。横浜や神戸よりも京都や浅草が好まれるし、爆買いブームがピークを過ぎても、抹茶入りのお菓子や職人の技術が生きた包丁など、日本ならではの商品はお土産によく売れている」と説明する。

 JR九州の事業関連では、中国や台湾からの観光客が、以前は日本の新幹線に大いに興味を示していたのが、自国の高速鉄道が発達した今、新幹線よりも日本の文化や歴史が感じられる列車を好む傾向が強まってきたという。JR九州が展開する、地域ごとの個性を持った「D&S(デザイン&ストーリー)列車」は外国人観光客にも好評で、D&S列車の1つである特急「ゆふいんの森」は乗客の7割が外国人というほどだ。

 同社が2013年から運行している豪華寝台列車「ななつ星in九州」も、乗客に占める外国人の割合が2014年度に11%、2015年度に19%、2016年度に30%(見込み)と増加傾向。また、外国人のななつ星予約申し込みの2分の1を、欧米人が占めているという。

 こうした傾向をふまえ、唐池会長は日本のインバウンドに関して「日本の文化や歴史、物語に触れたいというニーズは強い。しかし、現実には神社などに隣接する敷地に駐車場やマンションが整備されていく状況があり、心配だ。積極的に守っていかなくては」と訴えた。

「ななつ星in九州」のラウンジカー「ブルームーン」を投影しながら講演(写真:赤坂 麻実)
「ななつ星in九州」のラウンジカー「ブルームーン」を投影しながら講演(写真:赤坂 麻実)
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