木造や鉄骨造の住宅は、地震でどのように壊れるのか――。日経ホームビルダーでは、過去に取材した様々な実験の結果をまとめ、2009年に連載記事として報じた。今回はその中から特別に、一部の記事を公開する。なお、内容は掲載当時のままであるため、紹介したデータの内容や登場人物の名称、肩書きなどは現在と異なる場合がある。ご了承いただきたい。(編集部)


本誌がこれまでに取材した様々な実験の結果から、地震に強い住宅をつくるためのポイントや、顧客提案につながる考え方を導き出す新連載。第1回は、2004年から06年にかけて実施された一連の実大振動破壊実験を取り上げる。現行の耐震基準ギリギリでは、阪神大震災に耐えられない可能性があることを示した、非常に珍しい実験だ。この住宅はなぜ壊れたのだろうか。

(写真:建材試験センター)
(写真:建材試験センター)
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  • ● 全く同じ間取りで、耐震要素の量を変えた試験体同士を比較した実大振動実験の例がある
  • ● 振動台で阪神大震災を再現したところ、現行の耐震基準ギリギリで建てられた試験体は倒壊してしまった

 実験は2004年、土木研究所(茨城県つくば市)の振動実験台を使い、阪神大震災の際に神戸海洋気象台が観測した地震波(JMA神戸波)を振動台で再現したものだ。建物は実物大の木造住宅で、壁量計算により、性能表示制度における耐震等級1(耐震要素が建築基準法同等)をギリギリで満たすように設計されていた。上の写真はその結果だ。写真左手前の通し柱が、1階と2階の間でくの字に折れているのがわかる。

 実験上の都合で、試験体の内部には倒壊防止ワイヤーが張り巡らせてある。このため変形はこの程度で済んでいるが、本来であれば崩れ落ちていたはずだ。