等級3も危険域だった

 現在、構造の専門家の間では、地震を受けた際の変形角の安全限界は、木造の場合で1.9度(層間変形角30分の1ラジアン)だと考えられている。「等級3」における2.2度という変形角でも、この「安全限界」を超えていることになる。

 阪神大震災は現行の耐震基準では想定していない巨大地震だ。壁量を1.5倍にしたとしても、阪神大震災級の巨大地震で被害を免れるのは難しいことも、この一連の実験は示している。

 なお、鉄筋コンクリート造の安全限界とされている角度は、わずか0.6度(同100分の1)。この角度の差から見ても、木造がいかに柔らかい構造であるかがわかるのではないだろうか。

実検概要

主催者は建材試験センターを事務局とする「木質構造建築物の振動試験研究会」(委員長=坂本功・慶応大学理工学部教授)。2004年から06年にかけ、「標準試験体」として同じ間取りで耐震要素を変えた実験を3回行った。記事で取り上げたのは1回目と3回目。2回目は「耐震等級2」だった。実験は建基法が規定する耐震要素のみを用いて行われたもので、実際の建物には外壁などが取り付けられるため、この実験よりも変形は小さくなる可能性が高い。

(日経ホームビルダー 2009年7月号の記事を再掲載)


シリーズ:実験で再現 建物はこう壊れる

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