傾いた側に寄りかかる
建物の1階は、常に2階や屋根を支えている。だが「等級1」のイラストのように変形が大きくなると、こうした重さを支えるのが難しくなる。変形で柱に角度がつくと、その傾いた側へ重さが寄りかかるからだ。いったん傾いた建物をより傾けようとする力は、角度がきつくなるほど強くなる。
変形が進むと、耐力壁などの耐震要素の破壊も進む。耐震要素が破壊され、地震への抵抗力が減った状態でさらに変形が進んで、柱が折れた。これが「等級1」が倒壊したメカニズムだ。「等級3」は変形を抑えられたため耐震要素の損傷が軽微で済み、柱も折れなかった、と言うこともできる。
こうして建物が壊れていく過程(崩壊過程)の研究は、現在も専門家の間で盛んに行われている。「等級1」では、1.2度程度の変形で筋かいの性能が失われ、2.3度で構造用合板の性能が失われたと推定した研究成果もある。柱が折れたのは、さらに変形が進んでからだろうと思われる。