傾いた側に寄りかかる

 建物の1階は、常に2階や屋根を支えている。だが「等級1」のイラストのように変形が大きくなると、こうした重さを支えるのが難しくなる。変形で柱に角度がつくと、その傾いた側へ重さが寄りかかるからだ。いったん傾いた建物をより傾けようとする力は、角度がきつくなるほど強くなる。

 変形が進むと、耐力壁などの耐震要素の破壊も進む。耐震要素が破壊され、地震への抵抗力が減った状態でさらに変形が進んで、柱が折れた。これが「等級1」が倒壊したメカニズムだ。「等級3」は変形を抑えられたため耐震要素の損傷が軽微で済み、柱も折れなかった、と言うこともできる。

●2つの試験体の比較
●2つの試験体の比較
実験に使われた試験体の1階を、実際の住宅として描いてみた。「等級3」で増やされた耐力壁は「等級1」の間仕切り壁の部分。間取り自体は変わらない(イラスト:笹沼真人)
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 こうして建物が壊れていく過程(崩壊過程)の研究は、現在も専門家の間で盛んに行われている。「等級1」では、1.2度程度の変形で筋かいの性能が失われ、2.3度で構造用合板の性能が失われたと推定した研究成果もある。柱が折れたのは、さらに変形が進んでからだろうと思われる。

「等級1」が破壊した様子

「等級1」の実験後の姿を詳細に見た。一般的な木造住宅の変形角が大きくなると、こうした破壊に至ってしまう

構造用合板が外れて性能を失った(外観を平面図右側から見た様子)
構造用合板が外れて性能を失った(外観を平面図右側から見た様子)
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梁との接合部で柱が折れて2階を支えられなくなった(平面図左下の隅柱)
梁との接合部で柱が折れて2階を支えられなくなった(平面図左下の隅柱)
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内部の筋かいが折れた(内部階段正面の筋かい)
内部の筋かいが折れた(内部階段正面の筋かい)
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