民間住宅の耐震診断・補強の公的支援強化を

 緊急提言では、阪神・淡路大震災や中越地震、東日本大震災といった大震災で形成されてきた「一人一人の生活再建がなければ、社会の再建はあり得ない」という理念を重視すべきだと指摘。「東日本大震災において到達された国の復興基準を切り下げることなく、国、地方、国民が一体となって」復旧・復興に取り組むべきだと訴えた。

 目下の課題である水道など生活インフラの復旧、避難所から仮設住宅への移行、災害がれきなどの処理といった事業はスピード感を持って実施するとともに、集いの場の提供などに努めるよう求めた。民間ボランティアや民間企業のノウハウをできる限り活用するとともに、住民の意見を十分取り入れることも重視した。

 交通や水道が遮断されて孤立化している南阿蘇村の立野地区では、大動脈の復活に向けて、トンネルなど大胆な整備手法の検討も促した。

 県が作成する復旧・復興プランについては、国土強靭化計画に沿う形でつくり、「オール熊本」として各市町村の復興プランとの連携も図ることを求めた。経済の復旧・復興に当たっては、県産品のブランド化や海外展開、観光戦略、研究開発拠点の集積なども踏まえ、広い視野と構想で進めることも要求した。

 被害が大きかった益城町や西原町、熊本市の東部地区の新たな街づくりを進めるに当たって、熊本空港を含む熊本都市圏東部地域として発展していけるよう、広域的、長期的な視点でグランドデザインを描くよう促した。

 さらに緊急提言では、余震が続く熊本県で南海トラフ地震など次の大規模地震が近い将来発生する可能性があると指摘。民間住宅などの耐震診断や耐震補強は早急に進める必要があるため、公的な支援を強化するよう求めた。

熊本城では大天守で瓦が落下したほか、天守台の石垣の一部が崩壊するなど大きな被害が出た。緊急提言では熊本城を「日本観光にとって何ものにも替え難い『宝』」として、修復・復元のプロセスを見てもらうことで観光客を取り戻すことを提案した(写真:日経アーキテクチュア)
熊本城では大天守で瓦が落下したほか、天守台の石垣の一部が崩壊するなど大きな被害が出た。緊急提言では熊本城を「日本観光にとって何ものにも替え難い『宝』」として、修復・復元のプロセスを見てもらうことで観光客を取り戻すことを提案した(写真:日経アーキテクチュア)
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 修復・復元が長期化すると見込まれる熊本城は、修復のプロセスをあえて見せることで観光客を呼び戻すことも提言した。(関連記事:熊本城で建造物倒壊が増加、重文の櫓など5棟も

 このほか、2014年に県が作成した「九州を支える防災拠点構想」に基づいて災害拠点の充実・拡大を図ることを提案。九州中央自動車道と中九州横断道路を早急に整備することを求めた。

 有識者会議は6月の会合を踏まえて最終提言を取りまとめる予定だ。