2016年熊本地震

応急危険度判定と罹災証明とは?<追加情報あり>

2016/04/17

 大地震で住宅などが被災すると、市町村が建築物の「応急危険度判定」と「被害認定調査」を実施する。

 応急危険度判定は、余震による建物の倒壊などから人命にかかる二次的災害を防止するために地震直後に実施する。

 判定結果は建築物の見やすい場所に表示され、居住者だけでなく、付近を通行する歩行者、災害ボランティアなどに対しても、建築物の危険性について情報提供する。判定は、都道府県が養成、登録した民間の建築士などからなる応急危険度判定士がボランティアで行う。

応急危険度判定の判定結果の表示(資料:全国被災建築物応急危険度判定協議会)

 被害認定調査は、被災した住宅の被害の程度(全壊、半壊など)を認定するために実施する。

 認定結果に基づき、被災者に「罹災証明書」が交付される。罹災証明書は、被災者生活再建支援金や義援金の給付、住宅金融支援機構や災害援護資金の融資、税金や保険料の減免・猶予、応急仮設住宅の入居条件などに活用される。被害認定調査は、被災者から申請を受けた市町村が職員などを派遣し、被災した住宅の傾斜、屋根や外壁、基礎の損傷状況などを調査する。

被害認定調査の概要(資料:内閣府)

 応急危険度判定で危険を示す「赤紙」が貼られると、イコール取り壊しという誤解が生じる可能性がある。国土交通省、47都道府県、建築関連団体、都市再生機構などで構成する全国被災建築物応急危険度判定協議会は、「応急危険度判定は罹災証明のための調査や被災建築物の恒久的使用の可否を判定するなどの目的で行うものではない」としている。

 熊本市では、「一部損壊」「床下浸水」の場合は、被害状況が分かる写真などを確認することで罹災証明を発行する。「半壊」「全壊」「床上浸水」の場合は、家屋調査の実施が必要になる。詳しくは、熊本市のホームページ「住家の「り災証明」の発行について」を参照。

被災者に寄り添うには

 被災者は不安を抱えているため、行政や判定士による判断に不満を抱くかもしれない。外観目視の調査だけでは、実体を正確に反映しないケースもあり得る。

 2014年11月22日に発生した長野県北部地震に関する記事「「危険」判定の被災住宅を解体から救え」では、建築士と行政、地元の大工・工務店などがスクラムを組み、応急処置を施すことによって危険要因を取り除き、多くの被災者が仮にでも我が家に戻れる状態をつくり出した事例を紹介している。住宅の専門家は参考にしてほしい。

被害状況を写真に撮っておく

 熊本県益城町や南阿蘇村などは、4月22日時点で罹災証明を発行できない状況だ。ただ、いずれの自治体もホームページ上で、「証明書発行の希望者は、破損個所の写真を撮っておいてほしい」と伝えている。

 以下に、熊本地震の主な被災自治体の罹災証明に関するページを掲載する(市町村名をクリックすると該当ページにリンク)。

益城町(4月22日時点で発行不可)

南阿蘇村(4月22日時点で発行不可)

宇土市(4月22日時点で当日発行ができない状況)

山都町(4月22日から開始。土曜日、日曜日、祝日も申請受付)

菊陽町(4月25日から発行開始)

甲佐町(4月23日、24日も受付)

熊本市

八代市

宇城市

阿蘇市

御船町

嘉島町

高森町

大津町

 一方、各損害保険会社は地震保険の契約者に対して、4月22日以降、自己申告に基づく損害調査を実施する。

 熊本地震で損害を被った木造建物(在来軸組工法・枠組壁工法)や家財の損害調査について、各損害保険会社が迅速に保険金を支払うために必要と判断し、契約者が承諾した場合には、従来の現場立ち会い調査だけでなく、契約者の自己申告に基づく損害調査(書面による調査)を実施する。

 なお、損害状況申告に際しては、契約者自身による専用帳票への起票、損傷箇所の写真撮影や印刷・添付の作業が必要になる。詳しくは、日本損害保険協会の「地震保険金の早期お支払いに向けた対応について」を参照。

 罹災証明の申請や損害保険の請求などにおいて、被害の状況が分かる写真は被害程度を証明する重要な資料となる。被災者は、被災した住宅を補修したり片付けたりする前に、被害の状況が分かる写真を必ず撮影しておきたい。

 地域の工務店や設計事務所など住宅の専門家も、顧客や地域住民に対して写真を撮影しておくことをアドバイスしたい。もちろん撮影の際は、応急危険度判定の結果を参考に、安全を最優先した上で被災した住宅に近寄ることが前提となる。

<追加情報>2 ページ目以降の記事を追加しました(2016年4月22日16時30分)

小原 隆=省エネNext編集長日経ホームビルダー