大地震で住宅などが被災すると、市町村が建築物の「応急危険度判定」と「被害認定調査」を実施する。

 応急危険度判定は、余震による建物の倒壊などから人命にかかる二次的災害を防止するために地震直後に実施する。

 判定結果は建築物の見やすい場所に表示され、居住者だけでなく、付近を通行する歩行者、災害ボランティアなどに対しても、建築物の危険性について情報提供する。判定は、都道府県が養成、登録した民間の建築士などからなる応急危険度判定士がボランティアで行う。

応急危険度判定の判定結果の表示(資料:全国被災建築物応急危険度判定協議会)
応急危険度判定の判定結果の表示(資料:全国被災建築物応急危険度判定協議会)
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 被害認定調査は、被災した住宅の被害の程度(全壊、半壊など)を認定するために実施する。

 認定結果に基づき、被災者に「罹災証明書」が交付される。罹災証明書は、被災者生活再建支援金や義援金の給付、住宅金融支援機構や災害援護資金の融資、税金や保険料の減免・猶予、応急仮設住宅の入居条件などに活用される。被害認定調査は、被災者から申請を受けた市町村が職員などを派遣し、被災した住宅の傾斜、屋根や外壁、基礎の損傷状況などを調査する。

被害認定調査の概要(資料:内閣府)
被害認定調査の概要(資料:内閣府)
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 応急危険度判定で危険を示す「赤紙」が貼られると、イコール取り壊しという誤解が生じる可能性がある。国土交通省、47都道府県、建築関連団体、都市再生機構などで構成する全国被災建築物応急危険度判定協議会は、「応急危険度判定は罹災証明のための調査や被災建築物の恒久的使用の可否を判定するなどの目的で行うものではない」としている。

 熊本市では、「一部損壊」「床下浸水」の場合は、被害状況が分かる写真などを確認することで罹災証明を発行する。「半壊」「全壊」「床上浸水」の場合は、家屋調査の実施が必要になる。詳しくは、熊本市のホームページ「住家の「り災証明」の発行について」を参照。

被災者に寄り添うには

 被災者は不安を抱えているため、行政や判定士による判断に不満を抱くかもしれない。外観目視の調査だけでは、実体を正確に反映しないケースもあり得る。

 2014年11月22日に発生した長野県北部地震に関する記事「「危険」判定の被災住宅を解体から救え」では、建築士と行政、地元の大工・工務店などがスクラムを組み、応急処置を施すことによって危険要因を取り除き、多くの被災者が仮にでも我が家に戻れる状態をつくり出した事例を紹介している。住宅の専門家は参考にしてほしい。