──行政の側の変化について、もう少し詳しく教えていただけますか。
嶋田 リノベーションスクールを始めた頃は、そこに飛び込んでくる感度のある公務員というのは、やっぱり僕らと同世代か、もっと若い人たちが多かった。
初めは、その人たちが主体となって動き、北九州やそこから広がった地域のスクールで得たものを持ち帰って、なんとか自分のまちでもスクールや、それに類する「まちのトレジャーハンティング」、あるいは「リノベーションシンポジウム」などを自治体の主催でスタートアップさせるというのが最初の数年間の流れでした。
清水 若手が地元に持ち帰って庁内で一生懸命、上司を説得していた段階が最初にありましたよね。そうするうちに課長、部長、局長というレベルで、そこに反応する上司の人たちが現れてきた。最近は首長さんや、地方議会の議員さんにも反応する人が現れ始めている。正直なところ僕らが最初は期待していなかったような人たちまで、関心を持つようになっている。それが、いちばんの変化じゃないでしょうか。
嶋田 自治体に対しては、家守構想やリノベーションまちづくり構想を策定する際のプロデューサーとして清水さんが関わってきました。そのなかで、公務員のうちの違う層の人たちがリノベーションまちづくりの効用に気づき始めた。そういうことじゃないかな、と。
清水 そもそも県庁の職員の意識がだいぶ変わってきましたね。
嶋田 例えば、埼玉の場合、県下の市町村でリノベーションまちづくりを開催したいということで、まず県が動いている。市町村の職員向けのリノベーションスクールを開催して、しっかりした組織を地元につくって動ける公務員が現れたら、その市町村のエリアのリノベーションスクールを支援していく、という考え方のようです。
清水 県としては、鳥取県、和歌山県、佐賀県、岩手県、群馬県、福島県、富山県などが意欲的に取り組んでいる。これも広がってきましたね。
──今回のサミットでは、行政の方を意識したプログラムが増えているのですか?
清水 行政の方を意識したプログラムを比較的、充実させているということですね。そして、もう一方の家守会社を目指す人たち、あるいは「事業者市民」と言い換えてもよいかもしれませんが、それら公民の両方の担い手がターゲットです。それぞれ地域に帰ったら一緒にやらなければダメですから、意識を共有する場になり得ると考えています。
──リノベーションまちづくりを仕掛ける側にも、常に変化を求められる局面があるわけですよね?
嶋田 僕らとしては、日本全国に1700ある基礎自治体のうち100くらいの自治体にはリノベーションスクールとリノベーションまちづくりを広げたいという野望があるんです。どうやったら、ちゃんとしたクオリティーで広げていけるか。清水さんとは結構それを大きなテーマとして話し合ってきました。
そのときに米国に「ナショナルメインストリートプログラム」という、ダウンタウン(中心市街地)を再生する手法があるんですけれど、これを参考にできないか、と。
清水 1970年代に始まった取り組みですね。米国では約3000余りのエリアに広がっていると聞いています。
嶋田 運営実務を手掛けるナショナルメインストリートセンターというところが各地域の情報を集約して、改めてスキームとして各地域に伝える役割を担っている。それで、全米大会のような集まる場があるということなんですね。各地域が獲得してきたノウハウや知恵を共有する場面がある。今度それを勉強しに行こうと思っています。
(次回に続く)
●「リノベーションまちづくり」の新局面 (1) 公民連携の理想形、そして地域産業の創出へ (2) 建築は「エリアの経営資源」──サミット開催