日経アーキテクチュア2011年9月25日号「『元気な街』の仕掛け人」。嶋田氏が代表を務めるらいおん建築事務所が改修設計を手掛けた北九州市小倉北区の「メルカート三番街」を紹介している。同年3月に「リノベーションシンポジウム北九州」、8月に「第1回リノベーションスクール@北九州」が開催されて以降、実験的なまちづくりの試みが始まった(資料:日経アーキテクチュア)
[画像のクリックで拡大表示]
日経アーキテクチュア2011年9月25日号「『元気な街』の仕掛け人」。嶋田氏が代表を務めるらいおん建築事務所が改修設計を手掛けた北九州市小倉北区の「メルカート三番街」を紹介している。同年3月に「リノベーションシンポジウム北九州」、8月に「第1回リノベーションスクール@北九州」が開催されて以降、実験的なまちづくりの試みが始まった(資料:日経アーキテクチュア)
魚町サンロード商店街の現在。メルカート三番街などの入る中屋ビルが面する全長100m余りの商店街。「転貸+改修」のビジネスモデルをエリアに応用。老朽化したアーケードを撤去した道路と、商店街の中に生まれた空き地を一体的に運用し、お金を稼ぐエリアに生まれ変わらせた。詳細は、日経アーキテクチュア2015年11月10日号「リノベで稼ぐ新モデル」(第4回)参照(写真:日経アーキテクチュア)
[画像のクリックで拡大表示]
魚町サンロード商店街の現在。メルカート三番街などの入る中屋ビルが面する全長100m余りの商店街。「転貸+改修」のビジネスモデルをエリアに応用。老朽化したアーケードを撤去した道路と、商店街の中に生まれた空き地を一体的に運用し、お金を稼ぐエリアに生まれ変わらせた。詳細は、日経アーキテクチュア2015年11月10日号「リノベで稼ぐ新モデル」(第4回)参照(写真:日経アーキテクチュア)
[画像のクリックで拡大表示]
魚町サンロード商店街の現在。メルカート三番街などの入る中屋ビルが面する全長100m余りの商店街。「転貸+改修」のビジネスモデルをエリアに応用。老朽化したアーケードを撤去した道路と、商店街の中に生まれた空き地を一体的に運用し、お金を稼ぐエリアに生まれ変わらせた。詳細は、日経アーキテクチュア2015年11月10日号「リノベで稼ぐ新モデル」(第4回)参照(写真:日経アーキテクチュア)

──行政の側の変化について、もう少し詳しく教えていただけますか。

嶋田 リノベーションスクールを始めた頃は、そこに飛び込んでくる感度のある公務員というのは、やっぱり僕らと同世代か、もっと若い人たちが多かった。

 初めは、その人たちが主体となって動き、北九州やそこから広がった地域のスクールで得たものを持ち帰って、なんとか自分のまちでもスクールや、それに類する「まちのトレジャーハンティング」、あるいは「リノベーションシンポジウム」などを自治体の主催でスタートアップさせるというのが最初の数年間の流れでした。

清水 若手が地元に持ち帰って庁内で一生懸命、上司を説得していた段階が最初にありましたよね。そうするうちに課長、部長、局長というレベルで、そこに反応する上司の人たちが現れてきた。最近は首長さんや、地方議会の議員さんにも反応する人が現れ始めている。正直なところ僕らが最初は期待していなかったような人たちまで、関心を持つようになっている。それが、いちばんの変化じゃないでしょうか。

嶋田 自治体に対しては、家守構想やリノベーションまちづくり構想を策定する際のプロデューサーとして清水さんが関わってきました。そのなかで、公務員のうちの違う層の人たちがリノベーションまちづくりの効用に気づき始めた。そういうことじゃないかな、と。

清水 そもそも県庁の職員の意識がだいぶ変わってきましたね。

嶋田 例えば、埼玉の場合、県下の市町村でリノベーションまちづくりを開催したいということで、まず県が動いている。市町村の職員向けのリノベーションスクールを開催して、しっかりした組織を地元につくって動ける公務員が現れたら、その市町村のエリアのリノベーションスクールを支援していく、という考え方のようです。

清水 県としては、鳥取県、和歌山県、佐賀県、岩手県、群馬県、福島県、富山県などが意欲的に取り組んでいる。これも広がってきましたね。

──今回のサミットでは、行政の方を意識したプログラムが増えているのですか?

清水 行政の方を意識したプログラムを比較的、充実させているということですね。そして、もう一方の家守会社を目指す人たち、あるいは「事業者市民」と言い換えてもよいかもしれませんが、それら公民の両方の担い手がターゲットです。それぞれ地域に帰ったら一緒にやらなければダメですから、意識を共有する場になり得ると考えています。

第5回リノベーションスクール@和歌山の参加者と嶋田氏(前列左から3人目)。スクールの導入では先行した自治体の一つ。なお今回サミットでは、県としては群馬県、鳥取県、佐賀県、市としては仙台市、浜松市、岡崎市、福山市、北九州市、佐伯市の各職員がカンファレンスに登壇する(写真:日経アーキテクチュア)
[画像のクリックで拡大表示]
第5回リノベーションスクール@和歌山の参加者と嶋田氏(前列左から3人目)。スクールの導入では先行した自治体の一つ。なお今回サミットでは、県としては群馬県、鳥取県、佐賀県、市としては仙台市、浜松市、岡崎市、福山市、北九州市、佐伯市の各職員がカンファレンスに登壇する(写真:日経アーキテクチュア)

──リノベーションまちづくりを仕掛ける側にも、常に変化を求められる局面があるわけですよね?

嶋田 僕らとしては、日本全国に1700ある基礎自治体のうち100くらいの自治体にはリノベーションスクールとリノベーションまちづくりを広げたいという野望があるんです。どうやったら、ちゃんとしたクオリティーで広げていけるか。清水さんとは結構それを大きなテーマとして話し合ってきました。

 そのときに米国に「ナショナルメインストリートプログラム」という、ダウンタウン(中心市街地)を再生する手法があるんですけれど、これを参考にできないか、と。

清水 1970年代に始まった取り組みですね。米国では約3000余りのエリアに広がっていると聞いています。

嶋田 運営実務を手掛けるナショナルメインストリートセンターというところが各地域の情報を集約して、改めてスキームとして各地域に伝える役割を担っている。それで、全米大会のような集まる場があるということなんですね。各地域が獲得してきたノウハウや知恵を共有する場面がある。今度それを勉強しに行こうと思っています。

(次回に続く)

「リノベーションまちづくりサミット!!!2017」公式サイト(クリックして閲覧)
「リノベーションまちづくりサミット!!!2017」公式サイト(クリックして閲覧)

●「リノベーションまちづくり」の新局面
(1) 公民連携の理想形、そして地域産業の創出へ
(2) 建築は「エリアの経営資源」──サミット開催