遊休物件の利活用によるエリア再生の取り組みから出発した「リノベーションまちづくり」が、ひと区切りを経て新たな局面を迎えている。これを推進する“エンジン”とされるリノベーションスクールが全国に広がるなかで様々な都市・地域経営の課題がつかみ出され、その解決に向けた活動の萌芽が現れている。公民双方の実践者が一堂に会する「サミット」開催が4月に迫る。

 2017年3月16日から19日の4日間、通算で12回目となる北九州市におけるリノベーションスクールが開催された。北九州家守舎、アフタヌーンソサエティ、公民連携事業機構のJVが主催し、北九州市などが共催に回っている。「さよならリノベーションスクール@北九州」とうたい、2011年8月から年2回、6年間にわたって続いた同地開催のスクールに、いったんの終止符を打った形になる。

 今期の閉幕の辞となる「クロージングアクト」は、リノベーションスクールの発案者であるアフタヌーンソサエティ代表の清水義次氏が担当。北九州の歩みを総括する意味合いを持つと同時に、後続の自治体で始まっている先進的な取り組みを紹介し、「ネクストステージ」を宣言する内容でもあった。

さよならリノベーションスクール@北九州の最終日、公開プレゼンテーションの様子。ユニットの1つでは、ユニットマスターやスクールマスターなどを務めてきた面々が、事業を提案する側を担当。写真は右から、青木純、馬場正尊、大島芳彦、吉里裕也、嶋田洋平、明石卓巳、林厚見の各氏(ほかに最終日は欠席の西村浩氏)(写真:日経アーキテクチュア)
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さよならリノベーションスクール@北九州の最終日、公開プレゼンテーションの様子。ユニットの1つでは、ユニットマスターやスクールマスターなどを務めてきた面々が、事業を提案する側を担当。写真は右から、青木純、馬場正尊、大島芳彦、吉里裕也、嶋田洋平、明石卓巳、林厚見の各氏(ほかに最終日は欠席の西村浩氏)(写真:日経アーキテクチュア)

さよならリノベーションスクール@北九州の最終日、公開プレゼンテーションの様子。会場は北九州市立商工貿易会館(写真:日経アーキテクチュア)
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さよならリノベーションスクール@北九州の最終日、公開プレゼンテーションの様子。会場は北九州市立商工貿易会館(写真:日経アーキテクチュア)

 短期集中型の「ユニットワーク」による事業提案と公開プレゼンテーションを起点とし、地元の不動産オーナーが抱える遊休物件と、まちなかにおける起業者や起業志望者のマッチングを図る。スクール開催後には、民間自立型のまち会社である「家守会社」の設立を促し、提案した事業の立ち上げと継続を補助金に頼らずできるようサポートする。開催スタート地である北九州のリノベーションスクールは、一連の活動においてシンボリックな存在だった。

 開催は全34地域、総計84回(家守塾を含む)、修了生は約2790人という実績。全国を見渡すと、この1~2年の大きな変化は、自治体の職員の意識の変化だという。

 当初は若手の行政職員が関心を持つ動きだったところ、課長、部長、局長クラス、自治体によっては首長が理解を示し、リノベーションまちづくりを導入する気運が高まっている。その結果、“パブリックマインドを併せ持つ民間”が自立して主導し、“プライベートマインドを併せ持つ公共(公務員)”が、その活動を支援する「公民連携」の理想形が、輪郭をはっきりとさせつつある。