ざっくり表示か青天井か

 表示されるべき内容については、「星マークの表示など大づかみの表現にとどめるべきだ」という意見と、「限界を設けずに青天井で表示できるほうが望ましい」という2つの意見が出された。

 北方建築総合研究所副所長の鈴木大隆さんは後者の意見。「技術力の高い企業がより高い性能を消費者に訴求できると市場が活性化する。特に断熱・気密などの外皮性能の向上は地域の経済や雇用に貢献するので、省エネ性能の上限を決めずに青天井で表示できるようになると理想だ」と主張する。

 一方で、積水ハウス執行役員技術部長の内山和哉さんは、「一次エネルギー消費量をはじめとして、数値を適切に消費者に伝えることは難しい。まずは星マークの表示とし、ざっくりした表現で消費者の理解を得るのが先決ではないか」と言う。

 三菱地所レジデンス商品企画部長の榎並秀夫さんも数値化の難しさを主張する。同社は首都圏で販売する新築分譲マンションの「ザ・パークハウス」を対象に、冷暖房にかかる一次エネルギー消費量を燃費に置き換え、「円」を単位として住戸ごとに表示する「マンション家計簿」を作成し、購入検討者に配布している。榎並さんは、「見込み客からは『燃費は分かったが、住み心地はどうなのか』といった声が聞かれた。そうした経験を踏まえると省エネラベルの普及には、経済性と快適性の両方が分かりやすく表示される必要がある」と話す。

 こうした議論を受けて、モデレーターを務めた早稲田大学創造理工学部建築学科教授の田辺新一さんは、「日本は省エネと言うと『我慢』や『節約』のイメージが強い。消費者の関心や理解を高めるには、欧米のように『省エネ=豊かな生活』というイメージに変えていく必要もある」と指摘した。

「住宅の省エネラベルの今後の展望について」と題されたパネルディスカッションの様子(写真:清水真帆呂)
「住宅の省エネラベルの今後の展望について」と題されたパネルディスカッションの様子(写真:清水真帆呂)
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