「最近は、品質を気にする建て主が増えている」――。こう説明するのは、検査会社カノムの長井良至社長だ。インターネットで法規などを調べ、デジカメで現場を撮影しては細かい質問や指摘をする。それが、欠陥発見のきっかけになることも少なくない。おざなりな対応をしていると、訴訟に至るケースもあるという。

 例えば、ある戸建て住宅の現場では、建て主が工務店の対応に激怒して工事が止まった。原因は、基礎工事での不備。打設した際、鉄筋のコンクリートのかぶり厚が不足していたことが発端だ。しかも、「1カ所だけ5mm足りていない」と建て主は指摘し、工事中断を主張した。「この程度は誤差の範囲で問題ない」と工務店の担当者は説明するものの折り合いがつかず、現場は5カ月以上止まったままだ〔記事1を参照〕

 たとえ欠陥でなくても、建て主への説明が悪いとトラブルになることも覚えておきたい。基礎の軽微なひび割れ、いわゆるヘアクラックで、住宅会社が建て主の信頼を失いかけた事例もある。

 この建て主は、家の基礎の外周部に計15本ほどのひび割れを見つけ、住宅会社に調査を依頼した。だが、「収縮によるひび割れであり問題はない」と住宅会社からの簡単な回答に納得ができず、ある公的機関へ相談。これが話をこじらせた。

 担当した一級建築士から「ひび割れがあるということは、家が傾いている可能性がある」と指摘されたことをきっかけに、施工した住宅会社が嘘を言っていると思い込んだ建て主。家への不安から精神を病んでしまった〔記事2を参照〕

  欠陥施工の多くは、現場監督がしっかりと確認をしていれば防げるもの。そのためには、確認すべきポイントを押さえておくことが重要だ。

 また、欠陥の有無にかかわらず、建て主には分かりやすい説明を心掛けたい。これは、現場監督だけでなく、顧客と一番多くの接点を持つ営業担当者にもいえることだろう。現場で確認しておきたい工事のポイントや、欠陥が見つかってしまった際の対処法などを頭に入れておくことが、これからの家づくりには求められるのではないだろうか。