今年は春から、建築物省エネ法の完全施行に伴う規制措置が動きだした。日経アーキテクチュア「新製品」欄と日経アーキテクチュアウェブ「製品ガイド」でこの1年間に紹介した製品を題材に、「省エネ」という切り口で特に注目したい設備や建材を集めてみた。

設備1 「両面発電」「デザイン性」など 
進化する太陽光発電関連機器

 省エネ建築を支える設備として既に定着している創エネ機器で、太陽光発電関連機器はその代表例の1つだ。ここ1年間ほどの製品動向に目を向けると、発電量や発電効率といった基本性能の向上に加えて、新たな用途提案、建築物の意匠や景観との親和性といったニーズを強く意識したものが目立っている。

 例えば、トリナ・ソーラー・ジャパンの「DUOMAX twin」は、両面受光型の発電セルを高透過倍強度ガラスで挟み込んだ太陽光発電パネルだ。一方の表面は直達光を受けて発電。その裏面でも地面やコンクリート、水面などから反射した光を取り込んで発電する〔写真1、図1〕。

〔写真1〕表裏両面で発電
〔写真1〕表裏両面で発電
「DUOMAX twin」の表面(左)と裏面(右)。影による発電阻害を防ぐため、ジャンクションボックスを発電セルに重ならない上部に配置している(写真:トリナ・ソーラー・ジャパン)
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〔図1〕反射光や散乱光も吸収
〔図1〕反射光や散乱光も吸収
裏面でも受光するので、従来利用されていなかったモジュール直下のコンクリートや芝生、砂地からの反射光も吸収し発電量を増やせる(資料:トリナ・ソーラー・ジャパン)
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 1モジュール分で直達光側の片面の最大出力は290~310W。その裏面の分を加えると5~20%の出力増加を期待できる。両面発電という機能から、同社は、まずは砂地や水上、積雪地などでの導入を想定している。いずれも、裏面への反射光を期待した分かりやすい導入例だ。

 また、コンクリートなどの反射光も利用できるうえに、発電セルのタイプによっては垂直に設置することも可能なので、建築物や土木構造物の外装部分といった箇所での利用も期待できる。同社は、鉄道駅や高速道路などの防音壁部分を設置面に生かすといった例を挙げる。

 モジュールはフレームレス構造なので、表面に段差がない。汚れの蓄積や着雪などによる発電効率の低下を抑えるとともに、メンテナンス性の向上にもつながる。

屋根形状に合わせて密に設置

 ソーラーフロンティアの住宅用太陽光発電システム「SmaCIS(スマシス)」は、様々な屋根形状に合わせて太陽光発電パネルを設置できるようにしたシステムだ。

 まず発電パネルは、同社の従来製品に対して1モジュール当たりの面積をコンパクト化した。さらに、新開発の専用架台で、従来よりも軒やけらばの先端に近い位置から設置できるようになった。

 例えば寄せ棟屋根で、従来製品「neoシリーズ」を合計40枚設置できるスペースであれば、「SmaCIS」なら45枚を設置可能だ。年間の推定発電量にすると、約25%の増加を見込めるという。

 「SmaCIS」の専用架台は、仕上げ高を従来製品より約4割低くできる。モジュールの色(黒色系)も含めて、屋根デザインとの一体感を高めやすいようにした〔写真2、図2〕。

〔写真2〕屋根との親和性を向上
〔写真2〕屋根との親和性を向上
「SmaCIS」のモジュール外観。仕上げ高さを同社の従来製品の約40%低く抑え、軒先からの間隔を狭めた(写真:ソーラーフロンティア)
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〔図2〕寄棟屋根にもフィット
〔図2〕寄棟屋根にもフィット
「SmaCIS」の設置イメージ。コンパクト化や設置方法の工夫で、同社の従来製品に比べて同じスペースにより多く設置可能になった。例えば下図のような寄せ棟屋根なら、モジュール枚数を5枚多く設置でき、年間推定発電量を約25%増やせる(資料:ソーラーフロンティア)
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 このシステムでは施工性の向上も図っている。取り付け部材などの一体化を進めたことで、同社の従来製品に比べて、同程度の面積なら施工時間を約20%短縮できるという。