宅配事業者の労働問題などが後押しとなり、社会問題となった宅配便の再配達。このニュースをきっかけに、戸建て向けの宅配ボックスの認知度が急上昇。脚光を浴びている。最新の製品を中心に、使い方や大きさなどを検証した。
戸建て向け宅配ボックスが注目されている。きっかけの1つは、宅配事業者の大手であるヤマト運輸に関する報道だった。
2017年2月、ヤマト運輸の労働組合が春闘で会社に対し、再配達などの宅配サービスの見直しを求めていることが報じられた。会社側は、再配達受け付けの締め切り時刻を変更するなどの対策を決めた。
再配達削減に対する課題は、ヤマト運輸にとどまらず他の事業者にも波及。多くの人から注目される社会問題として広がった。
再配達問題に関連し、パナソニックが2月に報道発表した内容も話題となった。戸建て向け宅配ボックスの実証実験の中間報告だ。これが同製品の認知度向上の起爆剤となった。
パナソニックは福井県あわら市で共働き106世帯を対象に、戸建て向け宅配ボックスの設置が再配達の削減にどの程度効果を上げるかを調べた。結果は、設置前後における再配達率が49%から8%へと激減〔写真1、図1〕。再配達削減に高い効果を期待できることが分かった。
さらに、大和ハウス工業が、分譲住宅で宅配ボックスを2月から標準で装備。翌3月からは、桧家ホールディングスも採用すると発表した〔写真2〕。加えて、宅配ボックスメーカーのナスタとパナソニックが、新製品を発表。これらの報道が相乗効果を生み、戸建て向け宅配ボックスの認知度が連鎖的に広がったのだ。
この過熱ぶりは、宅配ボックスメーカーの想像を超えていた。パナソニックに至っては、急激な受注増から当初予定していた新製品の発売時期を約2カ月延期する事態を招いた。
冷蔵荷物も受け取り可能に
宅配ボックスには、機械式と電気式の2つのタイプがある。機械式は電気配線工事が不要なタイプで、設置工事も簡単だ。他方、電気式は主にマンションなどで採用しているタイプで、ネットワーク接続を活用した通知機能などがあるのが特徴だ。戸建て向け宅配ボックスの場合は、機械式の製品が主流だ。
ただ、今後は戸建て向けでも、機械式に限らず多様なタイプの製品が登場するとみられる。例えば、マンション向け宅配ボックスで大手メーカーのフルタイムシステム(東京都千代田区)が、冷蔵機能付き電気式宅配ボックスを9月に発売する予定だ〔写真3〕。生鮮食品などの受け取りが可能になる。
他に、誰でもすぐに使える特徴を持つ宅配ボックスをナスタが17年内に発表する方針という。価格は1万円前後を予定している。
宅配ボックスは安全性が鍵
宅配ボックスならどんなものでも良いというわけではない。選択の鍵は、宅配便事業者の約款にある。
宅配便事業は、貨物自動車運送事業法に基づく認可サービスだ。各事業者とも、国土交通省認可の約款に基づいてサービスを提供している。その約款で、荷受人以外に荷物を引き渡す方法の1つとして、例えばヤマト運輸では「安全な管理及び保管が可能である荷物受け渡し専用保管庫(宅配ボックス)の使用」と定めている。他の事業者もほぼ同じだ。
だが、現時点では、宅配ボックスの安全性に関する基準や規格はない。そのため、安全性については、各宅配事業者と利用者の判断に委ねられている状態だ。たとえ利用者が安全と判断しても、事業者が安全ではないと判断すれば、その宅配ボックスでは荷物を受け取れない。設置したのに使えない――。そんな事態を招かないように、慎重に製品を選びたい。
現時点で主流の機械式の戸建て向け宅配ボックスに着目。2月以降に新製品を発表して注目を集めた、ナスタとパナソニックの製品を検証した。
目次
- 宅配事業者の労働問題がきっかけに
- 1.開閉方法を知りたい
- 2.入る箱のサイズを確認したい
- 3.発送や書留の受け取りもしたい
- 4.アパートでも使いたい
- 5.取り付けのポイントを知りたい
- 主な機械式の戸建て・集合住宅向け宅配ボックス