第2の女性所長を育てる

 浮き彫りになった課題はまだある。早坂総合所長に次ぐ世代に、現場の女性技術者がいないことだ。「結婚や出産を機に退職したり内勤に変わったりしたケースが多い。今後はソフト面のサポートも必須だ」(早坂総合所長)。自身は、入社5年目で出産し、産後2カ月で産前と同じ現場に復帰した経験がある。当時、育休後に現場復帰した前例はなかった。

 現場で働く女性技術者の定着を図るため同社では年に2回、意見交流会を実施している。鶴田執行役員は、「次世代を担う彼女らが結婚や出産を迎える頃までに、復職時の支援策を強化する必要がある」と話す。

鶴田高士建設部門執行役員(左)は、同社の社内で立ち上げている「業務効率化委員会」と「技術教育委員会」の推進役でもある。「女性が働きやすい環境の整備は、働き方改革に他ならない」と語る(写真:日経アーキテクチュア)
鶴田高士建設部門執行役員(左)は、同社の社内で立ち上げている「業務効率化委員会」と「技術教育委員会」の推進役でもある。「女性が働きやすい環境の整備は、働き方改革に他ならない」と語る(写真:日経アーキテクチュア)
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 現状は外注している現場の製図作業を、育休中の女性社員が希望すれば、自宅でできる制度などを検討しているという。同時に、業務の効率化や技術向上を軸にした教育にも力を注ぐ。「第2の早坂淳子」が生まれる日も、そう遠くない。