混構造で耐震壁を自由に

 「自由なプランが求められる住宅に混構造は有効だ」と小西代表。

 耐震性と遮音性を求め、低層の共同住宅や長屋などでは、RC造のラーメン構造や壁式構造を採用することが多い。しかし、ラーメン構造では柱や梁が住宅内に現れ、壁構造では壁や開口部の配置に制限が生じるなど、それぞれデメリットがある。

 代々木テラスでは壁式構造を用いながらも、コーポラティブ住宅特有のプランの多様さと、大開口を確保するために、耐震壁を自由な位置に配置する必要があった。そのための工夫が、3カ所に集約した耐震壁と、室内外の21カ所に現れる細い鉄骨柱だ。

メリハリが分かりやすい構造
メリハリが分かりやすい構造
「将来、改修するときに誰が見ても分かりやすい構造計画であることが大切」と藤原氏。左の写真は1階北側にリビング・ダイニングを持つC住戸。右は中央に配置した厚さ350mmの構造壁が分かるC住戸の1階(写真:吉田 誠)
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 まず建物のコアとなる耐震壁の位置を決めた。東西両端の厚さ250mmの壁と、それと直交する形で3棟を貫く厚さ350mmの「背骨」のような壁だ。

 そしてそれ以外の部分では、RCの耐震壁と鉄骨柱を組み合わせて配置した。直径120~140mmの細い鉄骨柱が上階の床スラブや耐震壁を下から支えるように設置している。

 ただし、「RC造と鉄骨柱を併用するには、コンクリートから鉄へと、力をスムーズに移行させる工夫が必要」と小西代表は話す。代々木テラスでは、鉄骨柱の頂部に、スタッドボルトを取り付けた90mm角の角鋼を連続させ、上階の耐震壁の中に挿入した。コンクリートからスタッドボルトを介して徐々に力が伝わり、コンクリートと鉄骨柱の接点に力を集中させる考え方だ。

コンクリートの中に鋼材を約2m延ばす
コンクリートの中に鋼材を約2m延ばす
接合部断面詳細図 耐震壁のコンクリートから下で支える鉄骨柱へと、角綱のスタッドボルトを介して力を伝える
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3階平面図
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2階平面図
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1階平面図
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[日経アーキテクチュア 2017年3月23日号掲載]