市民の声で機能を混在させる

 1日に1万人以上が太田駅を利用するが、周辺は衰退が進み、時間を過ごせる場所やカフェが欲しいという声が市民から出ていた。そこで太田市は、にぎわいを呼び戻す拠点として、初の市立美術館と5つ目の市立図書館が入る複合施設を計画した。

 「1kmほど南に中央図書館があるので、そのサテライト的な位置付けにして、BGMが流れ、話し声のざわめく図書館でもよいだろうと判断した」。事業をとりまとめ、完成後の運営を担当する太田市美術館・図書館の富岡義雅係長はそう説明する。

 実際の設計には、市民の声が大きく反映されている。「プロポーザルの条件だったワークショップ開催を、単なる意見を聞く場ではなく、基本設計を具体化していく議論の場として利用した。収拾がつかない不安もあったが、結果としてとても面白い設計になった」と、平田氏は話す。

 全体のゾーニングや、ボックスの数、スロープの配置など、空間構成の多くは、利用する市民の声を手掛かりにした。図書館と美術館が入り交じって配置されたプラン構成も、多数の意見をもとにつくったものだ。

 1つの空間に複数の機能が入り交じる施設の運営は、太田市の職員による直営だ。「市として運営のノウハウを蓄積しながら、駅前周辺の再生につながるような使い方をしていきたい」と、富岡係長は語る。

[日経アーキテクチュア 2017年5月11日号掲載]