点で照らし奥へ誘う
夜の台中国家歌劇院は洞窟らしさが増す。その要因の1つが照明だ。
照明設計を担当した岡安泉照明設計事務所の岡安泉代表は、「オペラハウスとしてのきらびやかさは必要だが、この建物にシャンデリアはふさわしくない。そこで小さな光の点を集めた照明を考えた」と話す。
全体を明るく照らすのではなく、空間の中心に明るい光を集め、周縁や通路などは照度を下げた。それによって点々と続く明かりをたどって建物の奥へ進みたくなるようなシークエンスを生み出した。
もう1つ、空間にアクセントを与えるのが、ファブリックだ。2階ホワイエでは鈍く光る緑色のカーテンがゲストを迎える。ファブリック全般をデザインした安東陽子デザインの安東陽子代表は、「カーテンはその奥にある空間の気配を想像させる。それぞれの空間を完結させつつ、2つの空間をつなげられる」と話す。照明の当たり方を考慮し、30cmピッチの波形フレームで、布のひだを美しく見せた。
照明とファブリック、そして真っ白な曲面構造が互いに作用し合う。建築であることを忘れてしまうような有機的な空間が出来上がった。
[日経アーキテクチュア 2016年11月24日号掲載]