断熱性能は16℃を目安に

 ZEH改修プロジェクトに当たり、まずは方向性を固める必要がある。リビタの場合は、住まい手の安全・安心だけでなく健康面を考慮した家づくりをスタートラインとした。具体的には、次のような改修目標を掲げた。

  • ・健康で快適な暮らしを実現するために、断熱性能を向上して、冬の間、エアコン1台で室内温度を快適に保てるようにする
  • ・安心・安全な暮らしを実現するために、国が定める耐震基準の1.5倍以上の耐震性能を確保する
  • ・間取りの自由度や住まい手にあった暮らし方の提案を実現するために、建物自体の耐震性能や断熱性能を向上する
  • ・我慢しない省エネ(ゼロエネ)を実現するために、太陽光発電システムや高効率の機器を導入して、消費エネルギーを実質ゼロ以下にする
  • ・長く住み継ぐために、既存住宅の資産価値を高める

 ここから、改修のプランを練る前のバランスの調整となる。

 ZEHの場合は、断熱性能の向上は大前提だ。とはいえ、販売することを考えると、むやみにコストをかけられない。そこで、「断熱性能の向上は、省エネ性能を高めるランニングコストの低減を目指すのを主目的とするのではなく、住まい手に安全・快適・健康な暮らしを提供することを主とする」(吉實部長)という方針を立てた。その目標としたのが、全室の室温が16℃以上になるようにする、という基準だった。

 16℃という室温は、英国の基準を参考にしたものだ。英国には住宅に関連する法律(住宅法)がある。その中に、HHSRS(Housing Health and Safety Rating System:住宅の健康と安全性の評価システム)で住宅を評価する仕組みがあり、冬期の室温が健康に与える影響について指針が示されているのだ。それによると、室温が16℃未満の場合、呼吸器系疾患などの恐れが高まるという。

温度と健康への影響(資料:Housing Health and Safety Rating System)
温度と健康への影響(資料:Housing Health and Safety Rating System)

 このように、バランスを調整しながらプランを固め実際の施工へと移っていくことになる。

 次回以降は、もう少し具体的にZEH改修プロジェクトの中身を追っていこう。まずは、各要素のバランスを決めていくプランニングを掘り下げていく予定だ。

<訂正>戸建て住宅の買い取り再販事業についての記述で、「HOWS Renovation Lab.」を「HOWS Renovation」に訂正しました。また、「50棟以上の販売実績」を「50棟以上の買い取り実績」に訂正しました。(2017年10月26日午後3時45分)