安藤建築の特徴は揺るぎない「板の構成」

 安藤さんの建築が世界的な評価を得た理由はもちろんある。安藤建築の特徴は、打ち放しコンクリートを板(ばん)で構成していること。安藤さんはル・コルビュジエに強い影響を受けたと言うけれど、コルビュジエは打ち放しの四角い箱をつくってはいない。一方、板による構成を得意としたのはミース・ファン・デル・ローエだ。つまり、安藤さんはミースの構成をコルビュジエの仕上げと構造で実現している。

1997年に撮影した安藤忠雄氏と藤森照信氏のツーショット(写真:藤森 照信)
1997年に撮影した安藤忠雄氏と藤森照信氏のツーショット(写真:藤森 照信)
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 ミースもコルビュジエも近代建築の原型だ。原型である限り絶対に揺るがないし、評価されるし、誰にも分かりやすい。安藤さんが世界的に評価されるのは、このように20世紀建築の王道、ど真ん中を歩いているからだ。

 板による構成を打ち放しコンクリートでつくるという原理を、安藤さんは固く守ってやってきた感がある。だから規模が大きくなってもデザインがぶれない。原理はミースとコルビュジエだから変わりようがないともいえる。

 私たちが知っている現代の建築家で、原理がしっかりしていて変わりようがないのは安藤さんと槇文彦くらいだ。ただし、安藤さんの原理は建築の規模が小さいほうが魅力的だ。大きくなるとダム化する。「兵庫県立こどもの館」(89年)を見てそう思った。