IoT機能をクラウドに移行

――機器間の連携を促す解決策として、情報基盤があるということか。

吉田:従来は家単体でシステムが使えることを重視していた。システムの稼働がインターネットとの接続を前提とした場合、ネットとつながらない状態となって住宅内のシステムが使えなくなるのは困ると考えたからだ。そのため、機器同士の横のつながりもHEMSを中心に家単位で考えていた。

 だが、いつまでたって住宅内での機器の横連携が進まない。気象センサーやスマートロック、LED電球など魅力あるIoT機器が登場しても、エコーネットが壁となり、それらの機器はつなげることすらできないという課題も生じた。そこで、発想を180度転換した。

 これまで家単位で閉じていたIoT住宅の機能を、全てクラウド側に移行。クラウド上の機能にインターネットを通じて機器をつなぐことを前提とした。機器の横のつながりは、クラウド上(情報基盤)で対応する仕組みだ。

大和ハウス工業が考える、従来型のスマートハウスの課題と、現在のIoT住宅での課題(資料:大和ハウス工業)
大和ハウス工業が考える、従来型のスマートハウスの課題と、現在のIoT住宅での課題(資料:大和ハウス工業)
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 ただ、クラウド側で連携するのには課題がある。例えば、クラウド側の運用費や維持費の負担をどうするかといったことだ。IoT機器をクラウドにつなげる認証を得るために、1つずつ契約書を作成して対処していたら、機器が増えた場合対応しきれないという問題も浮上した。

 住宅会社として、ビジネス展開がしにくいという課題もある。

 一般的に住宅を建てて引き渡す場合、住宅内に設置した設備や機器は使える状態にしておく。だが、IoT機器の接続は引き渡し後に追加するものが少なくない。そのため、建て主が自ら設定するのが基本となる。

 先に設置しておくIoT機器があったとしても、住宅会社が設定までかかわりにくい事情もある。現状では、IoT機器を使ったサービスの多くは、建て主のスマホで操作するタイプだ。さすがに事前に建て主のスマホを借りて設定するわけにもいかないだろう。

後編では、大和ハウス工業が描くIoT住宅の未来像に迫る。