第3次ブームの二の舞にしない

――すでに日本ではスマートフォンを使って家電機器を制御できる仕組みが登場している。これらをまとめる基盤は必要なのか。

吉田:確かに、今は魅力的なIoT機器がいろいろ登場している。だが、これらのIoT機器を複数使うには課題があると感じている。

 例えば、フランス・ネタモトの気象センサーやオランダ・フィリップスのLED照明システム「ヒュー」、米フィットビットのリストバンドといった製品だ。いずれもクラウドのシステムとは一対一でつながるものの、機器同士で横の連携をしたいとなると、やりにくい。

 しかも、複数の機器を使うとなると、それぞれの機器を操作するアプリケーションをスマホにダウンロードする必要があり、スマホの画面がアイコンだらけになってしまう。

 このようにIoT機器の横のつながりがやりにくい状況では、第3次ブームの二の舞になってしまうだろう。理由は機器メーカーの本音にある。

 第3次ブームに誕生したスマートハウスでは、HEMSを通じて分電盤や蓄電池、エアコン、給湯器などをつなぐために、標準プロトコル(通信手順)の「エコーネット」を使用することにしていた。だが、単純に機器をつなぐだけでは住宅に付加価値を与えるのが難しいことが分かった。

 そこで、家電製品などもつなげるようにしてサービスの幅を広げようと思ったが、これが難航した。家電メーカーは基本的に他社製品とつながるのを嫌がっていたのが理由の1つだ。経産省がエコーネットの標準化を進めたときも、最後まで家電メーカーは反対していたのだ。

 そこで、家電メーカーの同意を受けて簡易版の「エコーネット・ライト」を開発し、2011年12月から推奨版として普及が図られた。

 今ではエコーネット・ライトを搭載した機器も増えたが、家電メーカーは独自にやりたいというのが本音だろう。他社製品とつながるようになっても自社には全くメリットがないと考えているのではないだろうか。

 どのメーカーの製品でもつながり同じような機能が提供できるとなれば、顧客は自社製品を買ってくれなくなる恐れが生じる。購入してもらえたとしても、機器同士をつなげて動かなければ、どちら側に問題があるのかを調べなくてはならなくなり、負担が発生する。

 だからメーカーは、他社の機器とつなげなくても済むように機器単体に様々な機能を盛り込む。最近では、HEMSと連携するクラウドサーバーをあえてクローズドにして、他社製品が機能しないようにすることで他社製品と連携しないようにするケースもあるようだ。