情報基盤の整備に注力

――第3次ブームの頃、2008年10月に経産省が「2050研究会」を設置して、その課題の1つとして住宅のIT化について議論されていた(経済産業省の「2050研究会(第5回)-議事要旨」を参照)。第4次ブームを前に経産省が実施する実証実験ではこれまでと何が異なるのか。

吉田:2050研究会は、スマートホーム担当の前田泰宏審議官(商務情報政策局担当)が情報経済課長だった時に立ち上げ、私もメンバーに入っていた。研究会は非公開で、議事録に残せないような過激な本音をしゃべってほしいと言われていた。

 当初は電力線網をスマート化する「スマートグリッド」の導入が課題だったが、電力会社などが反対して難航していた。スマートグリッドが難しいのなら、スマートハウスの方を先行させようという話になり、実証プロジェクトは始まった(関連記事:住宅メーカー各社がスマートハウス実証実験を開始)。

大和ハウス工業は2010年に、独自のHEMS「D-HEMS」を採用したスマートハウスのモデルハウスを建てていた。写真は2010年に撮影したもの(写真:日経ホームビルダー)
大和ハウス工業は2010年に、独自のHEMS「D-HEMS」を採用したスマートハウスのモデルハウスを建てていた。写真は2010年に撮影したもの(写真:日経ホームビルダー)
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大和ハウス工業の独自HEMS「D-HEMS」の画面。写真は2010年に撮影したもの(写真:日経ホームビルダー)
大和ハウス工業の独自HEMS「D-HEMS」の画面。写真は2010年に撮影したもの(写真:日経ホームビルダー)
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 その後、2011年に東日本大震災が発生したことがきっかけとなり、再生可能エネルギーを代表とするような環境問題がクローズアップされた。その影響で、スマートハウスは電力をマネジメントするシステム、つまり、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)が大々的に取り上げられ、エネルギー制御一辺倒になった。

 本来なら、住宅内で利用できるサービスはエネルギー関連だけでなく、ヘルスケアなど幅広い分野に用途を広げるはずだったのだが…。

 なので、今回は、エネルギーに関連する事業は資源エネルギー庁やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)に任せることにして、我々はIoT機器分野でデータ活用できる基盤を整備しようということになった。データを活用したサービスを提供するにしても、個人情報保護や情報セキュリティなどの課題を解決する必要があるからだ。

 大和ハウスは、三菱総合研究所が経産省から受託した事業を、三菱総合研究所から再受託して参加しているという位置付けだ。この基盤の整備と構築を担っている。