情報を分析して利用

――ミサワホームのIoT住宅の中核となるリンクゲイツは、どのような特徴があるのか。

相馬康幸主幹(以下、相馬):昨今注目を集めている住宅内でのIoT機器は、スタンドアローンの家電製品などがスマートフォンとつながって操作できるというものが一般的だ。リンクゲイツの場合、センサーなどの情報を集積、解析、活用しながら、つながった機器などを操作するといった点が特徴となる。

 仕組みはこうだ。センサーの情報をクラウド側に送信して、クラウドサーバー上で集計・加工する。住まい手はそのデータをスマホなどで確認する。画面は情報が一元化されていて、その画面で機器も操作できる。

リンクゲイツの操作画面をスマホに表示した様子。画面はデモンストレーションが可能なモデルハウスのもの(写真:日経ホームビルダー)
リンクゲイツの操作画面をスマホに表示した様子。画面はデモンストレーションが可能なモデルハウスのもの(写真:日経ホームビルダー)
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 具体的なイメージはこうなる。例えば、室内の温度や湿度を計測して、熱中症の危険を検知したら、スマホに「熱中症アラート」が表示される。そのアラートを見た住まい手は、スマホで遠隔操作してエアコンをつける。

 水道の使用状況を検知して活用することで、様々サービスも実現できる。例えば、手洗いなどの利用状況を検知することで、子どもが学校から帰ってきたことを知らせる「おかえりアラーム」のサービスを提供できる。高齢者を見守ることができる「見守りアラート」では、しばらく水を使っていないことを検知して活用する。反対に水の使用量が明らかに増えている場合は漏水の可能性があると判断できるので、「異常使用アラート」として住まい手に伝えるサービスとなる。

 今後は、こうしたサービスメニューをどんどん追加していきたい。

――住宅内では何が中核的なデバイスとなるのか。

後藤伸希主幹(以下、後藤):当社のIoT住宅では、専用のLinkGatesホームゲートウェイが中核的なデバイスとなる。

 住宅内に設置する汎用機器やセンサー、ホームゲートウェイ、クラウドサーバーを組み合わせたIoT基盤の全体像を「LinkGatesプラットフォーム」と呼んでいる。その中でホームゲートウェイは、センサー情報を集積してサーバーとやり取りする役割を持つ。サーバーに送ったデータは分析した後、機器の自動制御に役立てる。

 スマート分電盤や電気錠、燃料電池、太陽光パネルなどの機器をホームゲートウェイともつながるようにしている。これらの機器とはエコーネット・ライト規格などを介して接続する。

 電気やガス、水道といったエネルギーの情報も取得できるように、ホームゲートウェイにつなげている。温湿度や開閉などを検知するセンサー類は、主に海外製品を使っている。そのため、ホームゲートウェイとは特殊なインターフェースで接続している。

リンクゲイツの概要(資料:ミサワホーム)
リンクゲイツの概要(資料:ミサワホーム)
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――従来ベースとしていたHEMSは活用しないのか。

後藤:4月から、HEMSの代わりにホームゲートウェイを採用する方針に切り替えた。受注棟数の約40%を占める太陽光パネルを搭載した住宅は、ホームゲートウェイの設置対象だ。

 HEMSが注目を集めた当初、エネルギー管理だけでなく、HEMSに色々な機能を搭載する考え方があった。だが、拡張が可能な製品が登場しなかった。そこで、HEMSを包含し、拡張性があるゲートウェイに移行することにした。

 当初は、海外製のゲートウェイ端末が多数あったため、それらの採用も検討した。だが、住宅メーカーとして家そのものに関わるサービスを提供する場合、オープンサービスをベースに開発するよりも、独自に開発したものをベースとする方が変化に柔軟に対応できるという結論となり、独自に開発することになった。

 リンクゲイツのホームゲートウェイの開発では、拡張性を重視した。接続したい機器やセンサーが後から登場した場合に備えて、API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を用意している。このAPIを使えば、その機器を接続できる。ホームゲートウェイはディスプレーのない住宅用コンピューターというイメージだ。

――リンクゲイツを発売してから半年経つが、反響はどうか。

石塚:まだ、販売店を回って勉強会を行っている段階なので、実際に数字に表れるのはこれからだ。

 ただ、販売店からは「エネルギーの見える化だけでなく、防犯や機器の遠隔操作といったサービスが建て主に分かりやすいので、訴求しやすくなった」という声を聞くようになった。リンクゲイツを標準搭載にしたいという販売店も出ている。

 また、分譲住宅の販売店からは、「リングゲイツ防犯パック」などのパッケージ商品が他社にない競争力となるといった評価を得ている。

ミサワホームのIoT活用住宅のデモンストレーション。スマホからシャッターの開閉を操作できる。外出先からも操作が可能。将来は、タイマー設定機能などの活用や、他の機器との連携も予定している(資料:日経ホームビルダー)

相馬:リンクゲイツは、サービスをパッケージ化できるのも特徴の1つだ。

 ホームゲートウェイをベースに、建て主の希望に合わせて機器やセンサーを組み合わせて導入できる仕組みになっている。そのため、防犯サービスなどをまとめて提供すれば、防犯パッケージの商品となるわけだ。ホームゲートウェイを含めても、パッケージ商品なら導入費用が平均15万円ぐらいで用意できる。サービスがパッケージ化されていれば建て主も選びやすい。

 今後はパッケージ商品などを活用して、新築だけでなく、ミサワホームで建てた住宅やアパート、高齢者向け施設、保育園などでリンクゲーツサービスを利用してもらいたいと考えている。

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