IoT活用で長く住み続ける

――IoT住宅を開発する狙いは何か。

石塚:当社の場合、住宅でのIoTの活用には3つの柱があると考えている。

 1つ目の柱は、「長く住み続けるため」だ。住宅の様々な部位をモニタリングすることで、アフターメンテナンスに役立つと考えている。例えば、壁内の湿度が高くなっていれば「雨漏りしている可能性がある」とアラートを出したり、フィルターを監視することで目詰まりのアラートを出したりといったものだ。これらは、センサーで計測した情報を活用すれば可能だ。

 2つ目の柱は、「防犯や防災」だ。例えば、防犯の分野では、窓に取り付けたセンサーやカメラを活用して、窓の開閉をモニタリングするといったサービスを提供している。

 防災の分野での具体的なイメージは、当社が2015年4月にサービスを開始した被災度判定計「GAINET(ガイネット)」だ。

 基礎部分に取り付けた計測機が地震波を計測し、建物の構造データと照合することで震度や建物の被災状況を瞬時に判定して、倒壊の危険性を居住者に知らせる仕組みだ。ミサワホームとミサワホーム総合研究所、KDDIの3社が協同で開発した。測定したデータはKDDIの高速データ通信サービス(LTE)ネットワークを経由してクラウドサーバーにリアルタイムで集約される。(関連記事:住宅の被災度判定計をLTE通信網で一括管理

ミサワホームとミサワホーム総合研究所、KDDIの3社が共同で開発した木造住宅用の地震計「GAINET(ガイネット)」の活用イメージ(資料:ミサワホーム)
ミサワホームとミサワホーム総合研究所、KDDIの3社が共同で開発した木造住宅用の地震計「GAINET(ガイネット)」の活用イメージ(資料:ミサワホーム)
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 3つ目の柱は「環境」だ。これからの時代、太陽光発電は電力を売って利益を得る売電型から、自家消費型へと転換するだろう。その際に、電気をどのように使えば最適に消費できるのかを住まい手に知らせる機能が必要となる。

 例えば、太陽光発電は昼間に発電量が多くなる。この発電した電気をいかに効率的に使うのか。場合によってはタイマー運転で昼間に炊飯、洗濯、掃除を行うなどライフスタイルを変える必要もある。

 これら3つの柱を軸に目指すのは、住宅の長寿命化やQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上に役立つ仕組みの提供だ。

 我々はハウスメーカーなので、IoTの機器や機能を外部から購入して後付けしてもらうというものではなく、住宅に最初から備わっている機器をモニタリングして活用することで、住まい手にサービスを提供したい。それによってエネルギー費用などのお金も節約でき、健康リスクも減らせるといったIoT活用型の住宅を目指している。