ミサワホームは、IoT(モノのインターネット)住宅のプラットフォームとなるシステム「LinkGates(リンクゲイツ)」を4月に発売した。IoT住宅に関しては多くの住宅会社が実証実験の段階にあるなか、他社に先駆けて商品化に踏み切った狙いはどこにあるのか。2回にわたって、その本音を探る。社内横断の「ホームOSプロジェクト」チームを統括する商品開発部の石塚禎幸課長、クラウドサービスの開発を担当する情報システム部の相馬康幸主幹、住宅に搭載する機器の開発を担当する調達開発部の後藤伸希主幹に話を聞いた。

――これまで住宅のIT(情報技術)化にどう取り組んできたのか。

石塚禎幸課長(以下、石塚):ホームオートメーション(HA)が注目された1990年頃から、ミサワホームのシンクタンクであるミサワホーム総合研究所でロボット開発に取り組み始めた。様々なレシピをデータベースに持ち、カロリー計算などを行うグルメロボットの「ハイテクキッチン」や、長椅子に座ったままで照明や空調、テレビなどを操作できるほか、部屋中を移動可能なカウチシアターロボットなど、快適さや居心地の良さに関わる機能を研究した実績がある。

ミサワホーム総合研究所が1988年に開発した「ハイテクキッチン」(写真:ミサワホーム)
ミサワホーム総合研究所が1988年に開発した「ハイテクキッチン」(写真:ミサワホーム)
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ミサワホーム総合研究所が1988年に開発した「カウチシアターロボット」(写真:ミサワホーム)
ミサワホーム総合研究所が1988年に開発した「カウチシアターロボット」(写真:ミサワホーム)
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ミサワホーム総合研究所が1989年に開発した「ハイテクバスロボット」(写真:ミサワホーム)
ミサワホーム総合研究所が1989年に開発した「ハイテクバスロボット」(写真:ミサワホーム)
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 その後、研究や開発が途切れていた時期があったが、2009年頃に注目を集めたスマートハウスをきっかけに、再び積極的に取り組むようになった。

 エネルギーを管理・制御するためのHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を独自に開発し、「enecoco(エネココ)」という仕組みをつくった。エネルギーの使用量を見える化したほか、生活の中に定着させる仕組みが必要と考え、家庭内で省エネの情報を共有したり、ミサワホームで家を建てた顧客の間でエネルギーの使用量などを比較できたりする、SNS的な仕組みを導入した。

ミサワホームが独自で開発したHEMS「エネココ」(資料:ミサワホーム)
ミサワホームが独自で開発したHEMS「エネココ」(資料:ミサワホーム)
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 その後、インターネットを通じて様々なサービスを提供するスマートホームの議論が始まったことが次の転機となった。ホームOSプロジェクトを立ち上げ、「住まいのIoT統合システム」としてリンクゲイツの提供を開始した。