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IoT住宅のホンネ

“賢い住宅”は繰り返される

2017/09/13

日経ホームビルダー

あらゆる機器や情報がインターネットでつながる「IoT(モノのインターネット)」。最近、住宅業界でもよく耳にするようになってきた。これからの住宅業界はIoTきっかけに、大きく変わっていくのだろうか――。第1回「AIスピーカーで住宅は変わる」では、最新の動向から「IoT住宅を取り巻く状況」をまとめた。第2回は、住宅業界での歴史を振り返りつつ、現状を整理する。(日経ホームビルダー編集部)

 大手ハウスメーカーが、IoT住宅に本腰を入れて取り組み始めた。大和ハウス工業や積水ハウスは実証実験を開始。ミサワホームはIoTを活用した住宅向けサービス「Link Gates(リンクゲイツ)」を4月からスタートさせた(詳しくは今後の連載記事に掲載)。果たして、住宅業界はIoT住宅で新たな需要を喚起できるのか。

ミサワホームは4月から、IoTを活用した住宅向けサービス「LinkGates(リンクゲイツ)」を開始(資料:ミサワホーム)

 大手の場合はSOUSEIとは少しスタンスが違う。大手を中心とした住宅業界には「今度こそ」との思いがあるからだ。住宅生産団体連合会(住団連)が作成したパンフレットを見ると、その背景が判る。

 住団連は2016年10月、日本電機工業会、ホームネットワーク規格普及団体のエコーネットコンソーシアムと共同で消費者向けに啓蒙用のパンフレット「これからの住宅のトレンド―ZEH・HEMS・IoT住宅で省エネで快適な住まいに」を作成した。このパンレットに描かれた「IoT住宅の目指す姿」を見ると、5年前の2012年頃に大手ハウスメーカーなどが売り出した「スマートハウス」のコンセプトとほとんど変わらない。

住宅生産団体連合会が作成したパンフレットに描かれた「IoT住宅の目指す姿」(資料:住宅生産団体連合会)

 ちなみに、スマートハウスは、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を中心的なデバイスとして、太陽光発電や蓄電池、エアコンなどの住宅設備を制御するというものだ。インターネットともつながることで、電力使用量のコンサルティングサービスといった新しいサービスが生まれるはずだった。

 だが、蓋を開けてみると、HEMSのモニターで使用電力量を「見える化」する機能を実現しただけ。居住者が利用したい新サービスは登場せず、「見える化」もすぐに飽きられて、失速してしまった。

 このような事情があるだけに、住宅業界にとっては、手垢が付いてしまった「スマートハウス」から「IoT住宅」に衣替えして、消費者の関心を再び引き寄せたいとの思惑があったのだろう。

 とはいえ、現時点では「IoT住宅」はまだイメージが先行し、具体的な中身は手探り状態だ。「本当にIoTやAIで住宅が売れるようになるのか」との声が、大手ハウスメーカーの内部からも聞こえてくる。

経産省と国交省がIoT住宅を後押し

 国の動きも活発化している。世耕弘成経済産業大臣は3月、産業が目指す姿として「コネクテッド・インダストリーズ(CI)」というコンセプトを打ち出した。「自動走行・モビリティサービス」「ものづくり・ロボティクス」「バイオ・素材」「プラント・インフラ保安」「スマートライフ」の5つを重点分野に指定。10月2日から6日に開催する国内最大のIT・エレクトロニクス総合展示会「CEATEC 2017」で、政府と産業界が双方の立場からCIのアクションプランを発表する予定だ。

10月2日から6日に開催する国内最大のIT・エレクトロニクス総合展示会「CEATEC 2017」(資料:CEATEC)

 この中の「スマートライフ」の取り組みにIoT住宅が含まれている。経産省は「スマートライフ」の構想で、約100兆円とも試算される家事労働の効率化を目指した「スマートライフ市場の創出」を掲げているのだ。

 既に5月から2016年度補正予算の施策として「スマートホームに関するデータ活用環境整備推進事業」に着手しており、IoT住宅を実現するための情報基盤づくりが検討されている。委託先の三菱総合研究所を通じ、大和ハウス工業、積水ハウス、日立製作所を代表企業とする3グループに分かれて実証実験を行っている最中だ。

経済産業省が進めるIoT住宅の施策例(資料:経済産業省)

 他方、国交省は6月、「2017年度サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)」の中で、IoT技術を活用した住宅の提案を公募した。次世代の住宅が備えておくべきIoT機能やサービスを模索している。

国土交通省はIoT住宅の機能やサービスを模索(資料:国土交通省)

本格的な離陸は2020年

 様々な企業が活発に動き出しているIoT住宅だが、果たして、いつ本格的に離陸できる時期を迎えるのだろうか。

 長年、住宅のICT(情報通信技術)化を研究する大和ハウス工業総合技術研究所の吉田博之主任研究員は、「2020年頃には第4次スマートハウスブームが到来する」と予測する。

 吉田主任研究員によると、ICTのブレイクスルーを経て、ほぼ10年周期で「スマートハウス」ブームが訪れているという。

「スマートハウス」ブームは10年周期で訪れる(資料:大和ハウス工業)

 歴史を振り返ると、ICTの進歩とともに、住宅をICT化する試みは繰り返されてきた。

 筆者が記憶している中では、最初に新たな住宅のコンセプトが登場したのは1989年のこと。「TRON(トロン)電脳住宅」だ。

 東京大学の坂村健氏(現・東洋大学教授)が提唱したTRONプロジェクトの一環として、住宅のいたるところにマイクロプロセッサー(MPU)やセンサーを埋め込んで空調や照明などを自動制御しようという取り組みだった。

 実際の住宅には結びつかなかったが、この研究の成果は製品開発の応用されて、エアコンなどの自動制御技術が大きく進歩したといわれている。

 それから約10年。2001年にIT国家戦略「e-Japan戦略」がスタートすると、「IT住宅」などの名称で再び次世代の住宅が注目を集めた。高速で常時接続可能なブロードバンド(広帯域)インターネットが一気に普及したのがちょうどこの頃だ。

 さらにおよそ10年後。深刻化する地球温暖化問題に対応するため、エネルギーを制御する技術が発達。スマートメーターやHEMSを活用して、エネルギー使用を効率化する「スマートハウス」が登場したのが2011年の頃だった。

 今後、IoTやAIなどの新技術の普及が進めば、スマートハウスの次のタイミングは、およそ10年後の2020年頃になるというわけだ。

姿が見えないIoT住宅の“中身”

 とはいえ、これらの動きもまだ具体的な中身が見えていないままだ。特に、居住者が必要とするような、IoT住宅のキラーサービスが見えてこない。各社とも、手探り状態が続いている。

 IoT住宅に関するデモンストレーションなどを見ていると、簡単な操作が中心だ。「カーテンの開け閉めを、わざわざ自動化する必要があるだろうか」と疑問に感じる人もいるだろう。

 本当に、居住者が必要とするアプリケーションを生まれるかどうかは、前回に紹介したSOUSEIやコネクテッドホーム アライアンスのように、企業の垣根を超えて連携し、新しいサービスが実現できるかにかかている。

 高齢者などを対象とすれば、住宅内での安全・安心を確保するために、室内温度によって熱中症予防のためにエアコンが自動的に動くといったサービスも考えられる。住宅内での子どもやペットの様子が気になる人向けのアプリケーションなどもあるだろう。

 「住宅メーカーにとっては、センサーなどのデータから住宅や設備機器の不具合を早期に発見できれば、維持管理を効率的に行えるし、リフォームビジネスも展開しやすくなる」(ミサワホーム商品開発部ホームOSプロジェクトの石塚禎幸課長)という住宅業界にとってもメリットがあるアイデアも出てきている。

 果たして2020年に次世代住宅の第4次ブームは到来するのか。各社の動向を注視していきたい。

千葉 利宏=ライター [日経ホームビルダー

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