あらゆる機器や情報がインターネットでつながる「IoT(モノのインターネット)」。最近、住宅業界でもよく耳にするようになってきた。実証実験の場では、NTTドコモやKDDI、東京電力、インテルといった住宅産業以外の企業が住宅のIoT化をけん引する姿を多く見かける。これからの住宅業界はIoTきっかけに、大きく変わっていくのだろうか――。「IoT住宅」を1つのキーワードに、住宅業界の未来を探っていこう。住宅業界で鍵となる企業に話を聞き、それぞれの本音を紹介する。まず最新の動向と住宅業界での歴史を振り返りながら、「IoT住宅を取り巻く状況」を2回に渡って整理しておこう。(日経ホームビルダー編集部)

 8月下旬の夜、東京・恵比寿の会場を借り切って、IoT住宅のイベントが開催された。主催したのは、2010年に設立したばかりの住宅会社SOUSEI(ソウセイ、奈良県香芝市)だ。同社は、全国各地の有力な地場工務店のほか、大手建材メーカーや不動産流通サービス会社、IT企業などをイベントに招待し、参加者は約100人に上った。

v-exを発表するSOUSEIの乃村一政代表取締役CEO(写真:SOUSEI)
v-exを発表するSOUSEIの乃村一政代表取締役CEO(写真:SOUSEI)
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 「スマホのような家をつくりたくて住宅会社を創業した」――。SOUSEIの乃村一政代表取締役CEOは、イベントの冒頭で、IoT住宅にかける熱い思いをこう語り始めた。乃村代表取締役は住宅会社の経営者であると同時に、ITエンジニアとしての顔を持つ人物だ。その両方の知見から、新たな家づくりを目指している。

 その第1歩として開催したイベントで披露したのが「v-ex(べクス)」だ。v-exは、住宅内の設備機器をつなげて制御するほか、インターネットを通じて様々なサービスを利用できる装置である。米アマゾンの会話型AI「Alexa(アレクサ)」に対応しているため、「Amazon Echo(アマゾンエコー)」などAlexa対応のAIスピーカーを使えば、住宅内の家電製品を音声で操作できる。

AIスピーカーのamazon Echo(写真:amazon)
AIスピーカーのamazon Echo(写真:amazon)
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 v-exはこれらの機能を連携して各種アプリケーションを実行する住宅用OS(オペレーティングシステム)としての役割を担う。サービスなどを提供する機能はインターネットを介してアプリケーションとして追加することから、まさに“スマホのような住宅”が実現するというわけだ。SOUSEIは2018年6月にv-exを主に住宅会社向けに販売する予定だ。

 注目したいのは、イベントを実施したタイミングだ。Alexaの日本語対応が完了するのは17年末といわれている。それよりも3カ月早いタイミングでお披露目イベントを開催した。その背景には、製品を出してから協賛企業を募るというのではなく、製品を出す時には実用的なIoT住宅になるように、アプリケーションや各種デバイスの開発を終わらせておきたいという狙いが見え隠れする。

 準備は機器開発だけにとどまらない。住宅業界向けにも着々と進めている。同社は全国の地域でトップクラスの住宅会社との提携をすでに始めている。つまり、機器の販売開始と同時に、IoT住宅が次々と生まれる体制を整えているというわけだ(詳しくは、今後予定している、連載記事のなかで紹介)。