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AIスピーカーで住宅は変わる

2017/09/13

あらゆる機器や情報がインターネットでつながる「IoT(モノのインターネット)」。最近、住宅業界でもよく耳にするようになってきた。実証実験の場では、NTTドコモやKDDI、東京電力、インテルといった住宅産業以外の企業が住宅のIoT化をけん引する姿を多く見かける。これからの住宅業界はIoTきっかけに、大きく変わっていくのだろうか――。「IoT住宅」を1つのキーワードに、住宅業界の未来を探っていこう。住宅業界で鍵となる企業に話を聞き、それぞれの本音を紹介する。まず最新の動向と住宅業界での歴史を振り返りながら、「IoT住宅を取り巻く状況」を2回に渡って整理しておこう。(日経ホームビルダー編集部)

 8月下旬の夜、東京・恵比寿の会場を借り切って、IoT住宅のイベントが開催された。主催したのは、2010年に設立したばかりの住宅会社SOUSEI(ソウセイ、奈良県香芝市)だ。同社は、全国各地の有力な地場工務店のほか、大手建材メーカーや不動産流通サービス会社、IT企業などをイベントに招待し、参加者は約100人に上った。

v-exを発表するSOUSEIの乃村一政代表取締役CEO(写真:SOUSEI)

 「スマホのような家をつくりたくて住宅会社を創業した」――。SOUSEIの乃村一政代表取締役CEOは、イベントの冒頭で、IoT住宅にかける熱い思いをこう語り始めた。乃村代表取締役は住宅会社の経営者であると同時に、ITエンジニアとしての顔を持つ人物だ。その両方の知見から、新たな家づくりを目指している。

 その第1歩として開催したイベントで披露したのが「v-ex(べクス)」だ。v-exは、住宅内の設備機器をつなげて制御するほか、インターネットを通じて様々なサービスを利用できる装置である。米アマゾンの会話型AI「Alexa(アレクサ)」に対応しているため、「Amazon Echo(アマゾンエコー)」などAlexa対応のAIスピーカーを使えば、住宅内の家電製品を音声で操作できる。

AIスピーカーのamazon Echo(写真:amazon)

 v-exはこれらの機能を連携して各種アプリケーションを実行する住宅用OS(オペレーティングシステム)としての役割を担う。サービスなどを提供する機能はインターネットを介してアプリケーションとして追加することから、まさに“スマホのような住宅”が実現するというわけだ。SOUSEIは2018年6月にv-exを主に住宅会社向けに販売する予定だ。

 注目したいのは、イベントを実施したタイミングだ。Alexaの日本語対応が完了するのは17年末といわれている。それよりも3カ月早いタイミングでお披露目イベントを開催した。その背景には、製品を出してから協賛企業を募るというのではなく、製品を出す時には実用的なIoT住宅になるように、アプリケーションや各種デバイスの開発を終わらせておきたいという狙いが見え隠れする。

 準備は機器開発だけにとどまらない。住宅業界向けにも着々と進めている。同社は全国の地域でトップクラスの住宅会社との提携をすでに始めている。つまり、機器の販売開始と同時に、IoT住宅が次々と生まれる体制を整えているというわけだ(詳しくは、今後予定している、連載記事のなかで紹介)。

動き出したジャパンクオリティのIoT住宅

 大手企業でもIoT住宅に取り組む動きが始まった。東京急行電鉄を中心に、パナソニックグループ、LIXIL、美和ロック、三菱地所グループなどが参加した企業連合「コネクテッドホーム アライアンス」の設立が7月に発表された。正式な発足は設立総会を開催する9月だが、7月時点で約30社の企業が参加を表明している。

東京急行電鉄を中心に、パナソニックグループ、LIXIL、美和ロック、三菱地所グループなどが参加した企業連合「コネクテッドホーム アライアンス」を設立。正式な発足前にもかかわらず、7月時点で約30社の企業が参加を表明した(資料:コネクテッドホーム アライアンス)

 具体的な中身は、この原稿を執筆している時点では明らかにされていないが、日本の住宅を大きく変える可能性がありそうだ。同アライアンスでは、米国で提唱されている「コネクテッドホーム」で描かれている「暮らしのIoT」が、日本では実現していないと指摘。この状況を打破して、日々の生活課題・社会課題を明確にして、ライフスタイルを革新する取り組みを行っていくと表明している。

 では、米国のコネクテッドホームとは、どのような住宅なのか。

 米国のベンチャー企業のブレイン・オブ・シングス(BOT)が代理店を通じて2月から日本での営業活動を始めているので、その内容を一例に紹介していこう。

 BOTは、6月に東京ビックサイトで開催された住宅展示会「住宅ビジネスフェア2017」でAIスマートホームシステム「CASPAR(キャスパー)」のデモンストレーションを行った。販売代理店で、オール電化のリフォーム工事などを手掛けるエコライフエンジニアリング(東京都新宿区)が出展した。

米ベンチャー企業のブレイン・オブ・シングスが開発したAIスマートホームシステム「CASPAR(キャスパー)」。日本では、エコライフエンジニアリングが代理店を務める(資料:エコライフエンジニアリング)

 CASPARは、AIスピーカーと連携してエアコンや照明などの設備を音声入力で操作できるシステムだ。住宅に設置した各種センサーを使って居住者の行動データや室内環境データを集めてAIで学習することで、居住者の行動を予測して設備機器を自動で制御することもできる。

 例えば、朝、目覚まし時計が鳴ると、部屋のカーテンが開き、音楽が流れるといった動作を自動で行う。また、音声で「キャスパー、シアターモード」と命令すれば、スクリーンが開いてAV機器が起動。そして、照明の明るさを自動調整するといった映画を見るのに準備する一連の機器操作を、自動的にやってくれる。

 BOTによると、居住者が住宅でスイッチに触る操作回数は1日に90回以上。CASPARを導入すれば、スイッチ操作の8割が自動化できるという。残りの操作も音声で制御可能だ。

 注目したいのは、この音声操作だ。実現するためのデバイスであるAIスピーカーはコネクテッドホームの要となっている。日本のコネクテッドホーム アライアンスでも、AIスピーカーがキーデバイスになるのは間違いないだろう。

AIスピーカーのある暮らしとは?

 9月1日からドイツで始まった欧州最大の家電見本市「国際コンシューマ・エレクトロニクス展 IFA2017」では、AIスピーカーや音声入力対応の家電機器の新製品が続々と登場した。

9月1日からドイツで始まった欧州最大の家電見本市「国際コンシューマ・エレクトロニクス展 IFA2017」(資料:IFA2017)

 日本でも音声入力対応リモコン付きテレビが商品化されており、10月2日から6日に開催する国内最大のIT・エレクトロニクス総合展示会「CEATEC 2017」にも、AIスピーカーなどの新製品が続々と登場することが予想される。

 現時点でスマホに音声入力している日本人は、外出先などでほとんど見かけない。しかし、住宅や自動車など密室空間で使うAIスピーカーであれば、恥ずかしがり屋(?)の日本人も遠慮なく音声入力を使うようになるだろう。スマホの操作が苦手な高齢者や障害のある人にもIoTを手軽に使ってもらえるようになるし、テレビやエアコンなど複数のリモコンを探し回ったり、スマホでメニューを開いて操作するより、誰もが便利と思うだろう。

 AIスピーカーを突破口にIoT対応家電製品が住宅に入り始めると、それらの設備機器と温度、人感センサーなどのIoTデバイスを連携したアプリケーションを開発する動きが活発化するのは間違いない。それによって便利なサービスをいかに実現するのかが、IoT住宅普及の鍵を握っている。

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千葉 利宏=ライター日経ホームビルダー