日経アーキテクチュアの最新号に掲載した建築物をピックアップ。今号の1枚は、イクマサトシさんが撮影した「大腸肛門病センター高野病院」です。「建築プロジェクトデータベース」(日経 xTECH有料会員限定、2月9日までは日経アーキテクチュア・ウェブ有料会員限定)では、雑誌の発行と連動して最新の建築情報を更新。概要データや写真・図面などを見ることができます。

正面外観の見上げ。病棟の入る4、5階が、病室のプランに沿った凹凸を描いて大きく張り出す。外壁のALC版に見える十字形の柄は、病室のプランを暗示するもの(写真:イクマ サトシ)
正面外観の見上げ。病棟の入る4、5階が、病室のプランに沿った凹凸を描いて大きく張り出す。外壁のALC版に見える十字形の柄は、病室のプランを暗示するもの(写真:イクマ サトシ)
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(日経アーキテクチュア1月25日号フォーカス建築から)

 熊本市中心部に近い大江地区で、5年ほど前から大規模な再開発が進んでいる。広さ約7万3000m2の日本たばこ産業熊本工場の跡地開発だ。これまでに集合住宅や大型スーパーなどが完成している。2017年8月に開業した「大腸肛門病センター高野病院」もその1つだ。2kmほど東にあった旧病院が手狭になり、ここに土地を購入して移転した。

 建物は鉄骨造の地上6階建て。上層階の外壁が凹凸に張り出す外観は、一般的な病院のイメージとは異なる。166ある病床の一つひとつに“自分の窓”がある病室のプランや、随所にあるテラスなどの配置を、そのまま形にした外観だ。ひと回り小さい下層階には、外来や診察室、健診センター、手術室などが入る。

 設計は、共同建築設計事務所(東京都新宿区)とコンテンポラリーズ(横浜市)の2社による設計共同体(JV)が担当した。「患者や医師、看護師、そして広く地域にも開かれており、自然にも親しめる病院を提案した」。コンテンポラリーズの柳澤潤代表がそう話すように、病院内には、広いテラスのある食堂や、3面が開口の開放的なカフェ、病棟のラウンジなどの各所に、熊本の風景を見渡せる空間がある。

 このプロジェクトは「くまもとアートポリス(KAP)事業」の1つとして、2013年のプロポーザルで設計者を選定した。KAP事業は、後世の資産となる建築や都市の創造を目的に、熊本県が1988年に創設したもの。官民の事業者が参加でき、県は設計者選定などでプロジェクトをサポートしていく。高野病院は、KAPとして90番目のプロジェクトに当たり、初めての病院建築だ。

 共同建築設計事務所とコンテンポラリーズの設計JVを選定した理由を、病院を運営する社会医療法人社団高野会法人本部の堀和行次長はこう話す。「採光に気を配った明るい病院が提案されていた。図面や模型も細かくつくり込まれており、熱意が感じられた」

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