日経アーキテクチュアの最新号に掲載した建築物をピックアップ。今号の1枚は、イクマサトシさんが撮影した「COMICO ART MUSEUM YUFUIN/COMICO ART HOUSE YUFUIN」です。「建築プロジェクトデータベース」(日経 xTECH有料会員限定、2月9日までは日経アーキテクチュア・ウェブ有料会員限定)では、雑誌の発行と連動して最新の建築情報を更新。概要データや写真・図面などを見ることができます。

焼きスギを小端立て(こばだて)にして仕上げた美術館北側のファサード。隣地の中央児童公園との間を走る里道に面して湧水利用の水盤を設けた。右側のエントランスに設置された「COMICO ART MUSEUM」のロゴは原研哉氏のデザイン(写真:イクマ サトシ)
焼きスギを小端立て(こばだて)にして仕上げた美術館北側のファサード。隣地の中央児童公園との間を走る里道に面して湧水利用の水盤を設けた。右側のエントランスに設置された「COMICO ART MUSEUM」のロゴは原研哉氏のデザイン(写真:イクマ サトシ)
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(日経アーキテクチュア1月11日号フォーカス建築から)

 全国第2位の源泉数、湧出量を誇る温泉地である大分県由布市の湯布院に、「COMICOART MUSEUM YUFUIN(コミコ アート ミュージアム ユフイン)」が誕生。村上隆氏や杉本博司氏など、世界的に知られる現代アートの美術館として2017年10月から一般公開を開始した。現在は事前申し込み制を取っている。

 発注者はインターネットサービスを手掛けるNHN JAPAN(東京都港区)。同社の保養施設「COMICO ART HOUSE YUFUIN(コミコ アート ハウス ユフイン)」を併設する。「社員がパソコンに向かう日常から離れ、温泉に浸ってのんびりできる環境を探していた。NHNグループが、拠点を置く韓国からも近い九州各地で土地を探し、『由布院美術館』(設計:象設計集団、2012年に閉館)があった敷地を買うことができた」と泉忠宏社長は説明する。

 「湯布院は日本の『村』の象徴的な存在だと捉えている。そのエッセンスを凝縮した建物にしたかった」と、設計者である隈研吾建築都市設計事務所主宰の隈研吾氏は話す。近年、JR由布院駅から敷地に続く「湯の坪街道」に土産物店や飲食店が増え、東京・原宿のように観光地化している。「こうした雰囲気を変える落ち着きのある建築を目指した」(隈氏)

 機能上、木造の採用は難しく、鉄骨造とした。しかし、美術館と保養所とも、周辺の木造住宅のスケールに合わせ、最高高さを約9mに抑えた分棟形式にした。隈氏の言う「村」のイメージだ。外壁には焼きスギを3種類に張り分ける形で用いて、深い軒とともにシャープな表情を生んだ。

 美術館のエントランスホールからギャラリーへは、一旦外に出て、美術館南側の軒下空間を通って移動する。茶室の露地のような構成だ。「庭を挟んで南側に立ち並ぶ保養所が持つ『家』の雰囲気を、訪れた人にも感じてもらいたかった」(隈氏)。庭は、八季を通じて緑を楽しめるようにきめ細かく植栽を吟味した。

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