日経アーキテクチュアの最新号に掲載した建築物をピックアップ。今号の1枚は、生田将人さん撮影の「豊中市立文化芸術センター」です。「建築プロジェクトデータベース」(ウェブ有料会員サービス)では、雑誌の発行と連動して最新の建築情報を更新。概要データや写真・図面などを見ることができます。

ブロック壁が演出する回遊空間。オープンホワイエのまわりを回遊する2階の通路を歩くと、壁によって向こうが見え隠れしたり、坪庭などの屋外空間が現れたりする。ギャラリーにもなる空間で、ブロック壁には約1.8mおきに展示物を掛けるフックが埋め込んである(写真:生田 将人)
ブロック壁が演出する回遊空間。オープンホワイエのまわりを回遊する2階の通路を歩くと、壁によって向こうが見え隠れしたり、坪庭などの屋外空間が現れたりする。ギャラリーにもなる空間で、ブロック壁には約1.8mおきに展示物を掛けるフックが埋め込んである(写真:生田 将人)
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(日経アーキテクチュア7月27日号 特別リポートから)

 建物の内外に現れた土色のブロック積みを見て、鉄筋コンクリート(RC)造の化粧材だと思う人がいるかもしれない。しかしこのブロックは、建物の構造体そのものだ。

 2017年1月にオープンした大阪府の「豊中市立文化芸術センター」は、建物の多くで、「鉄筋コンクリート組積造」という構造形式を用いている。英語で、補強された組積造を意味する「Reinforced Masonry」の頭文字を取って「RM造」とも呼ばれる。

 ここで使ったのは特注の中空コンクリートブロックで、幅540mm、高さ150mm、厚さ360mm。3本のリブを持つ。中空部分に鉄筋を通し、コンクリートを充填して構造体とする。エントランス空間である2層吹き抜けのオープンホワイエは、高さ6mまでブロックを積み上げた。トップライトからの光で、壁面は様々に表情を変える。

 「仕上げ材として張るのではなく、積み重ねていくものの力強さを常々、感じている。これまでレンガは使ってきたので、今回はRM造でやってみようと思った」。そう話すのは、設計を手掛けた日建設計フェロー役員の江副敏史氏。住宅地に隣接する低層建物であることから、親しみやすい土の風合いのRM造を目指した。

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