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盆休みに腕試し!全問正解なら建築ツウ(後編)

Q3.妹島和世とSANAA、Q4.坂茂のコラボ、Q5.伊東豊雄の幾何学

2017/08/10

日経アーキテクチュア

「編集長が出題! なるほど建築検定」のお盆休み用・総集編。その後編は、建築界の“ノーベル賞”とも呼ばれているプリツカー建築賞を受賞している3人について出題します。

 3問目は妹島和世氏に関する問題です。ここまで正解してきた人も、ここからかなり難しくなります。

 妹島和世氏は、個人としての活動(妹島和世建築設計事務所)と、西沢立衛氏とのユニット「SANAA」としての活動を使い分けています。

Q.以下のプロジェクトのうち、妹島和世建築設計事務所としてではなく、SANAAとして担当した(あるいは担当している)ものはどれ?

A:鶴岡市文化会館
B:グレイス・ファームズ
C:JR常磐線日立駅・自由通路
D:梅林の家
E:朝日新聞山形ビル

3問目の答えは……

 答えはBのグレイス・ファームズ。それ以外は妹島和世建築設計事務所として担当したものです。

グレイス・ファームズ。大地に有機的な影を刻むリバービルディングを、「サンクチュアリ」と呼ばれる多目的ホールの前から見渡す。アルマイト加工が施されたアルミ製の屋根がまるで竜のうろこのように光を反射させる(写真:伊藤 みろ)

 Aの鶴岡市文化会館(山形県)は妹島和世建築設計事務所・新穂建築設計事務所・石川設計事務所JVが設計を手掛け、現在建設中。2018年3月にグランドオープンの予定です。

 CのJR常磐線日立駅・自由通路は、茨城県日立市に2011年竣工。ジェイアール東日本建築設計事務所が設計を担当し、妹島和世建築設計事務所がデザイン監修を務めました。

JR常磐線日立駅・自由通路の東端にある展望スペース。妹島和世氏が設計したオリジナルのベンチに、駅利用者が腰掛けて海を眺めている。外の風景が映り込むことを狙って、天井をアルミパンチングメタルに、床は硬化剤を塗布したコンクリート打ち放しにした(写真:新関 雅士)

 Dの梅林の家は、2003年に、東京都内に竣工した個人住宅です。極薄の壁で小さな部屋をたくさん仕切った空間構成が話題を呼びました。

梅林の家の外観。敷地いっぱいに立っていた梅の木を家の周りに再配置した(写真:吉田誠)

 Eの朝日新聞山形ビルは山形市内に2002年竣工。遮熱塗装した無目地鉄板で覆った真っ白な箱で、とても新聞社のオフィスには見えません。今は曲面を多用するイメージのある妹島氏ですが、このころはシンプルな箱形の建物がメディアをにぎわせました。

朝日新聞山形ビルの見上げ。白い遮熱塗料が鈍い光を発する(写真:吉田誠)

 建築プロジェクトデータベースでは、冒頭の検索窓に「妹島和世」と入力するだけで、妹島和世氏が設計したプロジェクトで2000年以降に日経アーキテクチュアに掲載したものの概要データを簡単に検索できます。また、個々のページに記事(HTML版、PDF版)へのリンクがあるものは、それらの記事で設計の詳細を知ることができます。

第4問は坂茂氏

 第4問は坂茂氏です。東日本大震災の復興のために坂茂氏の設計で建設された「女川駅、女川温泉ゆぽっぽ」から。

海側(東)から見た「女川駅、女川温泉ゆぽっぽ」の全景。白い膜屋根が建物をふわりと覆う。駅前広場のデザインは女川町復興まちづくりデザイン会議が担当。駅前ロータリーを横へずらし、海へ延びるプロムナードへの歩行者動線を建物正面に配した(写真:吉田 誠)

 この施設は2015年3月、震災以来4年ぶりに全線開通したJR石巻線の駅舎です。温浴施設「女川温泉ゆぽっぽ」が併設されています。

Q.「女川駅、女川温泉ゆぽっぽ」の温浴施設「女川温泉ゆぽっぽ」には、あるアーティストと地元住民のコラボレーションによるアート作品が常設されています。そのアーティストとは?

A.草間彌生
B.日比野克彦
C.奈良美智
D.村上隆
E.千住博

第4問の答えは……

 答えはEの千住博氏(日本画家)。浴室のタイルアートがそれです。

 デザイナーの水戸岡鋭治氏と日本画家の千住博氏の協力を得て、千住氏が描いた富士山や鹿などの絵をタイルに焼きました。休憩所や脱衣室入り口の壁面にも町内外から公募した花のイラストと千住氏の樹を組み合わせたタイル絵を配し、空間に彩りを与えています。詳細はこちらのページから。

2階浴室。壁面に、千住博氏が描いた「泉と鹿」のタイル絵を配した。手前の壁上部には男女浴室をつなぐように「霊峰富士」が描かれている(写真:吉田 誠)
脱衣所前。正面の壁に、住民と千住氏がコラボレーションしたタイル絵が見える(写真:吉田 誠)

 こうした“公共らしくない”試みが実現できるのは、坂氏のネットワークの広さと行動力によるところが大きいでしょう。2014年のプリツカー賞受賞の際にも、デザインだけでなく、そうした点が評価されました。

 筆者は、実際にこの温泉に入りに行きましたが、木格子の間の膜屋根から柔らかな光が差し込む、実に気持ちのよい風呂でした。近くには、東利恵氏が設計したテナント型商店街「シーパルピア女川」もあります。

シーパルピア女川のA棟広場まわり。深い軒や木製デッキ、コの字形に配した大小のレンガのベンチなどが、人の滞留する場を生み出している(写真:吉田 誠)

 ぜひ、ひと風呂浴びに女川に行ってみてください。仙台からJRの列車で2時間ほどの場所です。

第5問は伊東豊雄氏

 最終問題は、もはや巨匠といってもよいほど多くの賞を受賞している伊東豊雄氏です。今年5月には村野藤吾賞を受章し、7月には日本人3人目となるUIAゴールドメダルの受章が決まりました(関連記事「伊東豊雄氏がUIAゴールドメダル受賞!」)

 村野藤吾賞の対象となったのは、2016年に台湾・台中市に完成した台中国家歌劇院です。

 台中国家歌劇院の内部は至るところが3次元の曲面で囲まれています。コンクリートの曲面の施工には、「トラスウォール工法」を採用しました。工場で加工した鉄筋部材を現場に運搬して設置し、メッシュ型枠を固定してコンクリートを打設する方法です。施工を担当した麗明営造にとっては初めての工法でした。

 では、ここで5問目です。

1階のインフォメーションカウンターなどが並ぶスペース。3次元曲面が続く構造で、洞窟のような空間が連続している(写真:日経アーキテクチュア)
Q.台中国家歌劇院を構成しているコンクリートの曲面は、何という幾何学ルールによって出来ているでしょう。

A.ハイパーボリック・パラボロイド
B.エリプティック・パラボロイド
C.カテノイド
D.コーン
E.クロソイド

第5問の答えは……

 答えはCの「カテノイド」です。「カテノイド(Catenoid)」は、日本語でいうと「懸垂面」です。伊東事務所ではこんな模型をつくって検討しました。

構造の基本形は2枚の面で上下に引き伸ばした膜の形(写真:伊東豊雄建築設計事務所)

 実際に出来上がったのはこんな空間です。確かに、施工者がなかなか決まらなかったというのがうなずけます。

2014年の施工途中に撮影した2階ホワイエ(写真:加納 永一)

 ちなみに、選択肢に挙げたほかの4つの意味は下記のとおりです。

  • ハイパーボリック・パラボロイド(Hyperbolic Paraboloid): 双曲放物線面、HP面
  • エリプティック・パラボロイド(Elliptic Paraboloid): 楕円放物線面、EP面
  • コーン(cone):錐面
  • クロソイド(clothoid):らせんの1種

 さて、いかがでしたか。5問全問正解は難しいとしても、3問以上正解であれば、相当の建築好きであることは間違いないでしょう。

 最後に、文科系出身の筆者がさも何でも知っているかのように、こんな問題をつくることができるのも、「建築プロジェクトデータベース」(ウェブ有料会員サービス)の検索機能のおかげです。もちろん実務に大いに役立ちます。がっつり利用してみたい方はウェブ有料会員に登録を!

宮沢 洋日経アーキテクチュア