第1問の答えは……

 答えはCの「SunnyHills at Minami-Aoyama」(以下、サニーヒルズ南青山)。

 Aの馬頭町広重美術館(2000年竣工、現・那珂川町馬頭広重美術館)は、隈研吾氏が木という素材に本格的に取り組むきっかけとなった建築ですが、構造は鉄筋コンクリート(RC)造・一部鉄骨(S)造です。

馬頭町広重美術館の南北を貫く通路。左にレストラン、右にエントランスホールがある。この部分は鉄骨造。波板ガラスの屋根からルーバーを通して光が差し込む(写真:三島 叡)
馬頭町広重美術館の南北を貫く通路。左にレストラン、右にエントランスホールがある。この部分は鉄骨造。波板ガラスの屋根からルーバーを通して光が差し込む(写真:三島 叡)
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 Bの浅草文化観光センター(2012年竣工)は、S造・一部SRC造です。複数の平屋を積み上げたように見える外観から、「もしかして木造?」とも思えますが、さすがに地上8階建てで木造を採用するのは現在の日本では困難です。

浅草文化観光センターの外観。単調なペンシルビルにしないよう階高や天井・庇の勾配などを変えることで、変化に富む内部空間を構成した(写真:澤田 聖司)
浅草文化観光センターの外観。単調なペンシルビルにしないよう階高や天井・庇の勾配などを変えることで、変化に富む内部空間を構成した(写真:澤田 聖司)
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 正解のC、サニーヒルズ南青山(2013年竣工)はRC造・一部木造。「地獄組み」と呼ばれる木組みの部分が、本当に床や屋根の荷重を支えています。

 緩い坂道に立つ店舗は、南・東・北の3面が、高さ3層分の木組みに包まれています。断面60mm角のヒノキの製材を、斜めの格子状に組み上げました。一見、化粧のための外装材のように見えますが、構造材です。建物は西側約半分が鉄筋コンクリート(RC)造で、東側が木造。ヒノキの木組みには垂直に立つ部材は1本もありませんが、木造部分の3層の床と屋根を支え、地震時の水平力はRC造部分で受けます。

サニーヒルズ南青山の北東から見た外観。菱形を単位とする地獄組みをランダムに配置した構造体で、3層の床と屋根を支える。使用したのは、断面60mm角の岐阜県産の東濃ヒノキ(写真:安川 千秋)
サニーヒルズ南青山の北東から見た外観。菱形を単位とする地獄組みをランダムに配置した構造体で、3層の床と屋根を支える。使用したのは、断面60mm角の岐阜県産の東濃ヒノキ(写真:安川 千秋)
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 Dのとしまエコミューゼタウン(2015年竣工)は、RC造・S造・一部SRC造です。低層部のバルコニーが緑化され、森の中の散策路のようですが、構造は木造ではありません。

としまエコミューゼタウンの低層部を南西から見る。前庭に並ぶ樹木の新緑が、低層部(豊島区庁舎)の外装(エコヴェール)に点々とつながっていくように見える。その上にはペンシル状の超高層マンションがそびえ立つ(写真:浅田 美浩)
としまエコミューゼタウンの低層部を南西から見る。前庭に並ぶ樹木の新緑が、低層部(豊島区庁舎)の外装(エコヴェール)に点々とつながっていくように見える。その上にはペンシル状の超高層マンションがそびえ立つ(写真:浅田 美浩)
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 EのTOYAMAキラリ(2015年竣工)はS造。アトリウム内にすごい量の木ルーバーが使われていますが、これらは構造材ではありません。

TOYAMAキラリの5階エスカレーター付近から2階ロビーを見る。各フロアの吹き抜けは形状を変え、位置をずらしながら斜めに上昇する(写真:車田 保)
TOYAMAキラリの5階エスカレーター付近から2階ロビーを見る。各フロアの吹き抜けは形状を変え、位置をずらしながら斜めに上昇する(写真:車田 保)
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 建築プロジェクトデータベースでは、冒頭の検索窓に「隈研吾」と入力するだけで、2000年以降に日経アーキテクチュアに掲載した隈研吾氏設計の建築物の概要データを簡単に検索できます。また、個々のページに記事(HTML版、PDF版)へのリンクがあるものは、それらの記事で設計の詳細を知ることができます。