投資用と自社使用を合わせて全国に1200棟近いビルを保有する日本生命保険では、新築と改修の両方でBELSの認証を取得した。不動産の長期的な維持という観点から、BELS取得にはどのような可能性があるのだろうか。

高原 浩輔|Kosuke Takahara 1959年生まれ。84年大阪大学大学院工学研究科建築工学専攻修了後、日本生命保険に入社。95~97年大阪ユニバーサル企画(現ユー・エス・ジェイ)出向、2004年不動産部建築監理課長、08年不動産部専門部長(建築技術)。東京ビルヂング協会地球環境委員会委員。一級建築士、一級建築施工管理技士(写真:清水 盟貴)
高原 浩輔|Kosuke Takahara 1959年生まれ。84年大阪大学大学院工学研究科建築工学専攻修了後、日本生命保険に入社。95~97年大阪ユニバーサル企画(現ユー・エス・ジェイ)出向、2004年不動産部建築監理課長、08年不動産部専門部長(建築技術)。東京ビルヂング協会地球環境委員会委員。一級建築士、一級建築施工管理技士(写真:清水 盟貴)
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──不動産事業の概要についてお聞かせください。

 当社ではお預かりした保険料の運用先として不動産を運用しており、短期間での売買ではなく、長期保有が基本です。2016年3月末で投資用の賃貸ビル313棟、自社使用ビル867棟を全国47都道府県に所有しています。投資用のうち9割以上がオフィスで、最近は物流施設も手がけ始めました。保有ビルは昭和の終わりから平成の初めに投資した築25~35年のビルが約半数を占めています。

──15年度、16年度と国の補助事業を活用してBELSを取得しましたが、その理由は何ですか。

 社会的背景として東日本大震災以降の省エネ意識の高まり、環境・社会貢献・ガバナンス(ESG)に配慮した投資ニーズや省エネ関連法制の規制強化があります。一方で、長期保有の観点からは建物のライフサイクルコストが重要です。

 改修工事の前と後でエネルギー消費量のデータは得られますが、気象条件やテナントの入居状況によって違うので、単純に比較するわけにいきません。テナントに省エネ性能をどう説明したらよいかという課題がありました。ESG投資やCSR(企業の社会的責任)という流れに対応するためにも環境・省エネ性能を「見える化」する方法も必要です。CASBEE(キャスビー)やLEED(リード)などの認証ツールはありますが、それらは新築向きで、改修に適したものがありませんでした。

 建築物省エネルギー性能表示制度「BELS(ベルス)」は、建築物省エネ法に適応しており、設備機器の改修が説明しやすく、省エネに特化したわかりやすい評価の手法です。低コストで試算もできるので、改修工事に適していると判断して取り組むことにしました。

BELS取得は社会と自社のニーズが背景
BELS取得は社会と自社のニーズが背景
日本生命保険は、BELSを活用してテナントにビルの省エネ性能をアピールするだけでなく、ESG投資やCSRの推進という観点からも取得に前向きに取り組んでいる(資料:日本生命保険)
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