住戸ごとに断熱を設定

──住戸ごとに断熱仕様を変えているのですか。

 はい。ただ138戸分の省エネ計算を一つずつしているわけではありません。最上階と最下階の住戸、角の住戸はそれぞれ計算するとして、その間の中住戸は同じタイプが連なっているので、共通の計算で済みます。住戸が棟のどこに位置するかで、いくつかのパターンで対応できるようにしています。

 当社では13年に省エネ基準が改正されたのを契機に、住戸ごとに外皮計算や一次エネルギー消費量の算出を行うようにしました。そのため、BELS申請のハードルは高くありません。

 一方、当初難しかったのは、断熱仕様のバランスです。屋根や床下ピットなどに面する断熱材は、施工するときに躯体と一体で打ち込めばよいのですが、壁は一般的に現場で発泡ウレタンを吹き付ける形になります。断熱仕様を強化するためには、その厚さが何mmまで施工可能なのか。省エネ計算でシミュレーションしながら、基準をつくっていきました。

住戸の位置によって断熱仕様を強化
住戸の位置によって断熱仕様を強化
住戸ごとに外皮計算や一次エネルギー消費量の算出をしており、断熱の仕様も異なる。BELSの4つ星、5つ星を取得するため、同社の標準仕様と比較して、断熱材の厚さを増した。「t」は厚さ。( )内は同社の標準仕様の目安(資料:大京)
[画像のクリックで拡大表示]

──BELSを取得するメリットは。

 省エネでエコに特化したマンションを訴求する上で、BELSのような「お墨付き」がある、というのは顧客に伝えやすい。BELSそのものの認知度はまだ高くありませんが、環境に配慮したマンションだということはわかっていただけます。

──すべてのマンションについてBELSを取得しているわけではないのですね。

 そうです。マンションを企画する際に、立地や購入者層を考慮して、どのような仕様にするかを個別に決めています。例えば、このような土地だったら長期優良住宅にしようなど。事例を積み重ねて、最終的に社内のルールをまとめ、コンセンサスを得ていきます。基本的には、低炭素建築物の認定を取ったらBELSも取得することになると思います。

──BELS取得に当たって、計算の手間や断熱仕様のレベルアップなどでイニシャルコストも上がるのでは。

 もともと当社の標準仕様は一定の性能を確保しているので、販売価格に転嫁させることなく、予算の枠組みの中で対応することは可能です。物件として訴求できるメリットが立地や広さ、設備・仕様など多々あるうち、環境・エコの要素もその一つ、という位置付けですね。

 また、このマンションもそうですが、設計にはパッシブデザインを取り入れています。自然換気ストッパー付きサッシ、換気機能付き玄関ドアなどを採用し、通風や換気などに配慮した仕様にしています。

 まだBELSを取得したということだけでは省エネ性を高める意義が顧客にうまく伝わりにくいので、共感してもらえる要素が必要だと思います。そのあたりの伝え方、訴求の方法については、これからの課題と言えそうです。

大京では環境・エコへの配慮として、オリジナルのパッシブデザイン仕様を開発。グリーンカーテン用フック、Low-E複層ガラス、自然換気ストッパー付きサッシ、換気機能付き玄関ドアなど遮熱、通風・換気機能を持たせて快適性を訴求。住宅性能表示制度の省エネルギー対策等級4を基準としている(資料:大京)
大京では環境・エコへの配慮として、オリジナルのパッシブデザイン仕様を開発。グリーンカーテン用フック、Low-E複層ガラス、自然換気ストッパー付きサッシ、換気機能付き玄関ドアなど遮熱、通風・換気機能を持たせて快適性を訴求。住宅性能表示制度の省エネルギー対策等級4を基準としている(資料:大京)
[画像のクリックで拡大表示]