工務店は戸建て住宅でBELSを普及する鍵を握っている。全国約2900社の工務店で組織するJBNで行った省エネ住宅に関するアンケートから、会員である工務店のBELSへの意識の高さや取り組みの姿勢が見えてきた。

小山 貴史|Takashi Oyama 1964年熊本県生まれ。87年京都大学工学部卒業。国土交通省「住宅のエネルギー性能の表示のあり方に関する研究会」委員、経済産業省「ZEHロードマップ検討委員会」委員などを歴任(写真:清水 盟貴)
小山 貴史|Takashi Oyama 1964年熊本県生まれ。87年京都大学工学部卒業。国土交通省「住宅のエネルギー性能の表示のあり方に関する研究会」委員、経済産業省「ZEHロードマップ検討委員会」委員などを歴任(写真:清水 盟貴)
[画像のクリックで拡大表示]

──JBNでは会員に向けて、省エネ住宅に関するアンケート調査を1月に実施しました。

 建築物省エネルギー性能表示制度「BELS(ベルス)」は国の補助事業で取得や表示などが要件となっているので、そのために対応している工務店がほとんどだと思っていました。ところが、アンケート結果を見ると、国の施策をきちんと理解し、BELS評価を表示する社会的意義を踏まえて、意欲的に表示していこうという工務店も少なくないことがわかりました。

──住宅版BELSは 2016年4月から申請受け付けが始まりましたが、会員工務店の活用状況はいかがですか。

 アンケート時点では16年度が終了していないので予想値ですが、16年度のBELS評価の表示比率は1社当たりで平均12%です。新築住宅のすべてにBELS評価を表示すると回答した企業は13社ありました。50%以上に表示すると回答した企業を加えると45社に上ります。

 20年度のBELS評価の表示比率は、1社当たりで平均47%になると予想しています。その頃には補助金はないでしょうから、BELSが当たり前になると受け止めているのかもしれません。この結果はJBN会員に広く周知し、あまり積極的でない工務店にも世の中の流れを認識してもらって啓発していきたいと考えています。

省エネ住宅に関するアンケート結果
省エネ住宅に関するアンケート結果
アンケートでは住宅版BELSが導入される直前の15年度実績で省エネ住宅への取り組み状況を調査。回答企業の80%前後が断熱性能で等級4以上、エネルギー消費量でも等級4以上を確保。初年度(16年度)のBELS評価の表示比率は1社当たりで平均12%だった(資料:JBN)
[画像のクリックで拡大表示]

──他の結果はどう分析していますか。

 住宅性能表示制度における断熱性能は、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH(ゼッチ))基準相当を含めて等級4以上が85%を占めており、予想以上に数が多く驚きました。アンケートに回答した工務店は意識が高い方に偏っている可能性もありますが、一つの指標にはなります。ZEH基準をクリアした住宅も20%を超えたのはいい傾向と言えるでしょう。

 エネルギー消費量も等級5が35%、等級4以上で74%となり、それなりに高い割合でした。不明という回答が約20%ありましたが、これはすべての住宅で省エネ計算をしていないからだと思います。その一方で、標準仕様で等級をクリアしていても、性能評価を受けるかどうかは別問題なのかもしれません。

──ZEHへの取り組みは。

 太陽光発電を搭載している住宅は約30%で、そのうち530戸、全体の約10%がZEHまたはNearly ZEHという結果でした。経済産業省のZEHロードマップでは暖冷房や換気、給湯、照明を対象とした基準一次エネルギー消費量を外皮性能などで20%以上削減した上で、再生可能エネルギーを加えた削減率100%以上をZEH、削減率75%以上100%未満をNearly ZEHとしています。

 ZEH支援事業の要件となる「ZEHビルダー」に登録済みの工務店は250社、有効回答企業の60%近くに達していて、登録予定を加えると80%を超えました。登録済み工務店に20年度のZEH比率の目標を聞くと約57%との回答でした。環境共創イニシアチブ(SII)が行った調査でも約60%だったので、ほぼ同じということですね。