5つ星の取得を目指す

──BELS評価件数を増やす方法はありますか。

 私が期待しているのは、17年4月から始まる省エネ基準への適合義務化です。まずは延べ面積2000m2以上の非住宅が対象になります。省エネ基準の適合性の判定を受けた際に交付される省エネ適合判定通知書などを用いることで、あらためて省エネ計画に関する設計図書や計算書を用意することなくBELSの申請が行えるようになるからです。

 一次エネルギー消費量の計算方法には、「モデル建物法」と「標準入力法」があります。モデル建物法は簡略化されているため、標準入力法と比べて入力項目が少なく、手間を減らすことができます。ただ、省エネ性能が低めに評価される傾向があります。高いランクのBELS評価を目指すなら、標準入力法が有利になるでしょう。

──モデル建物法では4つ星、5つ星が取りにくいのですか。

 多くの場合、2つ星や3つ星程度になるのではないでしょうか。

 4月からの適合義務化を機に、省エネ基準をぎりぎりでクリアする程度のビルばかりが増えては、国の省エネ政策としては本末転倒になります。

──対策はありますか。

 標準入力法の入力シートからモデル建物法の入力シートが自動生成され、モデル建物法による結果が出力できるようになっています。

 ですから、あらかじめ標準入力法で入力しておいて、省エネ適合性判定ではモデル建物法のシートを提出し、その後に標準入力法のシートでBELS評価を申請する、という流れがいいと思います。

 BELSに慣れたら、4つ星、5つ星にとどまらず、さらに上のネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)を目指していただけるといいですね。下の表にあるように、すでにZEBクラスのビルは続々と建てられています。

BELS5つ星だけでなくZEBも増えている
BELS5つ星だけでなくZEBも増えている
16年12月までにBELSの5つ星を取得し、かつネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)を達成した非住宅建築物。ZEBが2件、Nearly ZEBが2件、ZEB Readyが6件(資料:住宅性能評価・表示協会のデータを基に早稲田大学田辺新一研究室が作成)
[画像のクリックで拡大表示]
ZEBは一次エネルギー削減率50%以上
ZEBは一次エネルギー削減率50%以上
非住宅建築物におけるBELSの5つ星は、基準一次エネルギー消費量からの削減率が40%以上(用途1)または30%以上(用途2)。ZEB Readyは同50~75%、Nearly ZEBは同75~100%、ZEBは同100%以上。BELS、ZEBともにコンセント負荷を除いて算出する(資料:経済産業省)
[画像のクリックで拡大表示]
築13年の建物を改修し、BELSの5つ星取得およびNearly ZEBを達成した竹中工務店東関東支店。外皮性能の改善や地中熱・太陽熱の利用、各システムの統合制御などの改修を行った(写真:新建築社写真部)
築13年の建物を改修し、BELSの5つ星取得およびNearly ZEBを達成した竹中工務店東関東支店。外皮性能の改善や地中熱・太陽熱の利用、各システムの統合制御などの改修を行った(写真:新建築社写真部)
[画像のクリックで拡大表示]

──BELSに関わる自治体の動きはありますか。

 東京都では延べ面積1万m2超のビルで、2000m2以上の業務系用途を含む場合、建築主が、東京都建築物省エネルギー性能評価書を売却先やテナントに提出することを義務付けています。同評価書にはエネルギー使用の合理化に関する性能を記しており、その中にある「設備システムのエネルギー利用の低減率(ERR)」はこれまでもBELSと計算方法が同一でした。しかし、用いている3段階の評価とBELS評価基準との関連がわかりにくくなっていました。そこで、3段階の評価などとBELSのランクの整合性を図るように改正され、17年4月から施行されることになりました。

東京都の評価基準をBELSに整合
東京都の評価基準をBELSに整合
東京都建築物省エネルギー性能評価書の「設備システムのエネルギー利用の低減率」の評価基準と、BELSの評価基準の整合を図った。17年4月から施行。ERR(Energy Reduction Ratio)は従来からある指標 ※1 非住宅用途1…事務所、学校、工場など ※2 非住宅用途2…ホテル、病院、百貨店、飲食店、集会所など (資料:東京都)
[画像のクリックで拡大表示]