エビデンスを残す
──4月からの工事監理はどのように変わりますか。
まず、施工者の方々に、「省エネ基準適合の義務化が始まったので、報告書の記録の残し方やそれに伴う工事の方法はこうしてください」と具体的に説明していきたいと考えています。
今、当社の監理グループではその準備中で、標準の書式や報告書のひな型をつくっています。そのように分かりやすい形でルールを共有して、完了検査時に必要な資料がきちんと積み上がっていくようにします。
──納入した建材や設備機器などのラベルもすべて保管が必要なのですね。
はい。着工から完了検査までには非常に多くの施工者やメーカーが関わります。そういった関係者がすべて確実にラベルを保管するようになるまでに時間を要するかもしれません。
──設計図通りに施工されているか、現場管理者が写真を撮るなどしてすべての記録を残すのですか。
すべての部分で写真などの記録を残すことは現実的ではありません。設計図書の中には、確認箇所とどのような記録を残すかも示してあり、それに基づいて報告書を提出していただければいいと思います。
──その理由は。
施工者は、工事請負契約に従って責任を持ってつくりますという大前提がありますので、今回の省エネ基準適合義務についても、あくまでも最終的に証拠(エビデンス)を見やすい形で残していただければいいという意味だと捉えています。
──申請に関わるものはどの程度のエビデンスを残す必要がありますか。
建築主事や指定確認検査機関の判断によりますが、完了検査に耐え得る程度のものになると思います。例えば断熱材であれば、すべての箇所に予定通り施工されていることを1m2ごとに調べる必要があるのか。そうではなく、代表的な何箇所かを選んで写真を残せば、他も同様に施工されていると判断してもらえるか――。ただし、換気扇のような設備機器は全部が性能通りに動くという証明は必要です。大きなビルですと相当な数に上ります。
これまで建築業界では、いわば性善説にのっとってお互いを信じて建物をつくってきました。そういう慣習が変わろうとしているのかもしれません。