2017年4月から、延べ面積2000m2以上の非住宅の新築などを対象に、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」に係るエネルギー消費性能基準(省エネ基準)への適合が義務化される。これに伴い、建築実務者には新たにどのような対応が求められるのか。一次エネルギー消費量の計算法などの策定に携わった澤地孝男氏に話を聞いた。
──いよいよ省エネ基準の適合義務化が始まります。
15年7月に、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」が制定されました。これに伴って17年4月から、延べ面積2000m2以上の非住宅建築物の新築は省エネ基準への適合が義務になります。そのほか非住宅部分で300m2以上の増改築を行ったものの一部も対象になります。
省エネ適合性判定は建築確認申請の手続きに連動します。つまり、対象となる建築物は、省エネ基準に適合していなければ建築確認済み証の交付を受けることはできません。
──これまでの省エネ基準への適合率はどの程度ですか。
2000m2以上の建築物の14年の適合率は、13年省エネ基準で96%とかなり高い。一方で住宅は、住宅エコポイントや復興支援・住宅エコポイントを機に約50%まで適合率が向上しましたが、それまでは20%未満でした。
──適合義務化の対象を広げていくためにはどういった方策が考えられますか。
まず、さまざまなプロモーションです。特に、省エネ建築に関する知識の普及や教育が重要ですね。
国土交通省は設計者や施工技術者に向けた講習会を全国で展開していますし、経済産業省は一次消費エネルギーがゼロになるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の施策で引っ張っています。興味を持たせて、しかもインセンティブを付与する。能力のある人たちにどんどん先に行ってもらうという施策です。そうした最先端の知識は、大学や高等専門学校などの教育カリキュラムでも活用してもらえるといいのですが。
──大学の建築学科では、省エネに関してはどのようなことを学べますか。
現時点では応用的な内容は乏しいですね。産業界が大学に対して教育を強く要請すれば変わっていくのではないでしょうか。産と学がうまく連携して、新しい実務的な知識を大学で教えられるようになるといい。例えば、設計製図の授業などで、単なる意匠設計ではなく、省エネ基準を満たす外皮などのスペックについても伝えるなどですね。