不動産マネジメントのトップランナーであるザイマックス。その頭脳集団、ザイマックス不動産総合研究所で調査・研究をリードする吉田氏に環境認証の普及を進めるにはどうすべきかを聞いた。

吉田淳(よしだ・あつし) 日本リクルートセンター(現リクルート)を経て、リクルートビルマネジメント(現ザイマックス)取締役就任。その後、ザイマックスビルディングサイエンス(現ザイマックス不動産総合研究所)を設立し、2001年から現職。ビルマネジメントや環境不動産に関する調査・研究を統括している(写真:清水盟貴)
吉田淳(よしだ・あつし) 日本リクルートセンター(現リクルート)を経て、リクルートビルマネジメント(現ザイマックス)取締役就任。その後、ザイマックスビルディングサイエンス(現ザイマックス不動産総合研究所)を設立し、2001年から現職。ビルマネジメントや環境不動産に関する調査・研究を統括している(写真:清水盟貴)
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――いま不動産業界にはさまざまな環境認証制度があります。取得は進んでいるのでしょうか。

 大手不動産事業者を中心に新築ビルで認証を取ろうとする動きは少しずつ広まってきていますが、活発とはいえないと思います。

 テナント側の優先順位も高いとはいえません。ザイマックス不動産総合研究所が「テナントがビル選択の際に重視する項目」について調査したところ、建物の耐震性こそ上位に入っていますが、エネルギーや省エネなど環境関連については下位にとどまったままです。テナントからは環境認証制度自体が地球に優しいビルを広めるためのイメージキャンペーンのように受け止められているところもあります。

 しかし環境性能の高い良質なオフィスビルに入居することで、省エネに伴う費用削減効果だけではなく、生産性の向上や優秀な人材の確保など将来的な企業利益に繋がると考えられます。その部分の理解を広げることが環境不動産の普及における重要なバックグラウンドとなります。

テナントがビル選択の際に重視する項目
テナントがビル選択の際に重視する項目
環境不動産に関する項目のうち、安全性や快適性は重視されつつあるが、省エネに関する項目の優先順位が高いとはいえない(資料:ザイマックス不動産総合研究所)
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――不動産マーケットにおける環境や認証制度への意識を高めるにはどのような手段がありますか。

 まずテナント側について考えてみると、1つのアイデアとしては、テナントが環境認証を取得したビルへ入居する場合に事業所税を免除するなど、インセンティブを付与するやり方があります。金額の多寡は問いません。入居に際してなんらかのメリットがあれば、テナント側でもビルを選ぶときに環境認証を取得しているのか否かをチェックするようになる。肘でちょっとつついて注意喚起を促す、行動経済学の言葉ではナッジ(nudge)と表現されますが、そうした施策が有効だと思います。