寒冷地であることから建築・住宅の省エネ性能向上については先進地といえる北海道。30年以上にわたって省エネ建築の研究に携わり、省エネ性能表示制度についても検討に当たった北方建築総合研究所の鈴木大隆氏に話を聞いた。

鈴木大隆(すずき・ひろたか) 1958年北海道生まれ。専門分野は建築環境工学、建築構法計画。建築・住宅の省エネルギー・外皮デザイン、建築・地域のエコロジカルデザインなどに関する研究を数多く実施しているほか、国の住宅・建築物の省エネルギー基準策定、制度設計等に参画。東日本大震災以降、岩手県陸前高田市のまち・住まい・暮らしの再建・復興支援に参画。博士(工学)(写真:清水 盟貴)
鈴木大隆(すずき・ひろたか) 1958年北海道生まれ。専門分野は建築環境工学、建築構法計画。建築・住宅の省エネルギー・外皮デザイン、建築・地域のエコロジカルデザインなどに関する研究を数多く実施しているほか、国の住宅・建築物の省エネルギー基準策定、制度設計等に参画。東日本大震災以降、岩手県陸前高田市のまち・住まい・暮らしの再建・復興支援に参画。博士(工学)(写真:清水 盟貴)
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――省エネ性能表示の意義をどのように考えていますか。

 先駆的に省エネに取り組んでいる建築技術者や工務店は、これまでの住宅性能表示の「等級4」では物足りなくなっています。表示制度によってがんばって取り組んでいる建築・住宅について、客観的に相応の性能を示すことができるようになります。

――トップランナーだけでなく、一般の建築・住宅の性能を底上げするには。

 建築物省エネ法で、省エネ基準の適合義務化を図っていくわけですが、それだけでは不十分だと思います。国民が自らコストを支払うわけですから、コンセンサスを得るための情報提供など環境整備が必要だと考えます。

 例えば建築を構成するパーツは何万点もあり、それらはすべて省エネ性能に影響します。ただ、関連する性能値については日本工業規格(JIS)などは整備の途上にあるのが現状です。

 欧州連合(EU)では、省エネ建築について歴史が長いこともあり、こうした制度や建材などの環境整備ははるかに進んでいます。基準を決めるばかりでなく、周辺の整備を含めて、国民の理解と関心を得ていく必要があるでしょう。

2015年春、北方建築総合研究所と北海道はSUUMOの協力を得て、北海道の賃貸住宅を対象に省エネ基準や日本工業規格(JIS)のL等級などを星の数で表す性能表示の実験を行なった(資料:鈴木大隆)
2015年春、北方建築総合研究所と北海道はSUUMOの協力を得て、北海道の賃貸住宅を対象に省エネ基準や日本工業規格(JIS)のL等級などを星の数で表す性能表示の実験を行なった(資料:鈴木大隆)
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