建築物省エネ法に基づくエネルギー消費性能の表示制度(省エネ性能表示制度)が2016年4月から始まる。この制度によって社会はどう変わるのか。建築・住宅や不動産に携わる実務者はどう対応していけばいいのか──。制度の開発を主導した早稲田大学教授の田辺新一氏が解説する。

田辺新一(たなべ・しんいち) 1958年福岡県生まれ。専門は建築環境学。1980年早稲田大学理工学部建築学科卒業、1984〜86年デンマーク工科大学、1992 ~ 93年カリフォルニア大学バークレー校。現在、建築設備技術者協会会長、日本建築学会副会長、東京都環境審議会会長(写真:清水盟貴)
田辺新一(たなべ・しんいち) 1958年福岡県生まれ。専門は建築環境学。1980年早稲田大学理工学部建築学科卒業、1984〜86年デンマーク工科大学、1992 ~ 93年カリフォルニア大学バークレー校。現在、建築設備技術者協会会長、日本建築学会副会長、東京都環境審議会会長(写真:清水盟貴)
[画像のクリックで拡大表示]

──まず省エネ性能表示制度の概要を説明していただけますか。

 2016年4月から、(1)基準適合した建物向け、(2)それ以上の省エネ性能を持つ建物向けの2種類の表示制度が始まります。いずれもエネルギー消費性能の計算方法は同じ。基準以上の省エネ性能を持つ建物向けの表示には、自己評価と第三者認証があります。第三者認証は、住宅性能評価・表示協会が運用する建築物省エネルギー性能表示制度「BELS(ベルス)」を想定しています。

 BELSは、燃費性能によって建物の省エネ性能のランクを表す仕組みです。自動車を購入する時は燃費が気になりますよね。それを住宅に当てはめたと考えてください。家やオフィスがどの程度のエネルギーで快適な環境を保っているのかを示しています。

自動車と住宅のイニシャルコストとランニングコストを比較した。単純比較はできないものの、ほぼ同等の割合となる(資料:田辺新一)
自動車と住宅のイニシャルコストとランニングコストを比較した。単純比較はできないものの、ほぼ同等の割合となる(資料:田辺新一)
[画像のクリックで拡大表示]