2020年までに、全ての新築建築物は省エネ基準に適合しなければならなくなる。建築や住宅の専門家であれば既知のことだろう。

 適合義務化の根拠は、2016年4月1日に公布された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する基本的な方針」(国土交通省告示第609号)にある。そこには、「規制の必要性、程度、バランス等を十分に勘案しながら、平成32年(2020年)までに住宅を含む新築建築物について段階的に一定のエネルギー消費性能に関する基準への適合を義務化する」と明記されている。

 「そんなのは許さない」といまさら怒っても、仕方がない。すでに2017年4月からは、延べ面積2000m2以上の大規模な非住宅建築物(ビルなど)を対象に義務化が始まっている。

 義務化に該当する建築物を新築または増改築する場合、建築確認の手続きに省エネ適合性判定が連動することになった。いわゆる「省エネ適判」だ。

省エネ適合性判定および建築確認・検査の概略フロー(資料:国土交通省の資料をもとに日経BP総研 社会インフラ研究所が作成)
省エネ適合性判定および建築確認・検査の概略フロー(資料:国土交通省の資料をもとに日経BP総研 社会インフラ研究所が作成)
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 いまのところ省エネ適判は延べ面積2000m2以上の非住宅を対象とするが、300m2以上2000m2未満の非住宅と300m2以上の住宅には届け出義務が課されている。届け出の内容が省エネ基準に適合しないと、所管行政庁から指示・命令を受けることがある。

 では、300m2未満はどうか。性能向上への努力は建築主に求められるが、省エネ適判はもちろん、届け出などの手続きも原則不要だ。2020年までのしばらくの間は、これまでと何も変わらない。

 300m2未満の住宅を手がけている読者も少なくないと思う。省エネ適判をどう捉えているのか。

 2017年春の時点で、日経アーキテクチュア読者にアンケート調査した結果を紹介する。一般的に省エネ計算しなければ省エネ適判を受けられないことから、住宅での省エネ計算の実施状況を聞いた。

 すると、省エネ計算を実施しているのは4分の1程度に過ぎなかった。無回答を含めると、4分の3は未実施と推測できる。これでいいのだろうか。

住宅での省エネ計算の実施状況を聞いたところ、「無回答」がほぼ半数を占めた。「未実施」を含め、現時点で省エネ計算に取り組んでいない実態がうかがえる。調査対象は日経アーキテクチュア読者203人(資料:日経BP総研 社会インフラ研究所)
住宅での省エネ計算の実施状況を聞いたところ、「無回答」がほぼ半数を占めた。「未実施」を含め、現時点で省エネ計算に取り組んでいない実態がうかがえる。調査対象は日経アーキテクチュア読者203人(資料:日経BP総研 社会インフラ研究所)
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